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論文

 今日は「世界報道自由デー(ワールド・プレス・フリーダム・デー)」です。
 これは1991年5月3日にアフリカのナミビアで開かれたユネスコの国際会議で採択されたことを記念する日です。
 この報道の自由に関する日を国際連合が制定している背景には、それを脅かす事件が世界各地で発生しているからです。
 最近でも、昨年10月には地中海にあるマルタという島国の政界の腐敗を告発していたジャーナリストが自分の自動車に爆弾が仕掛けられて死亡し、今年4月にはロシアの地方都市でシリア内戦へのロシアの民間軍事会社の関与を調査していたジャーナリストがアパートの5階の自宅から謎の転落死をするという事件も発生しています。
 このような暗殺が疑われるような死亡だけではなく、戦場での取材中などに死亡するジャーナリストは、1995年には64人、2005年には63人でしたが、2012年には152人、2016年には156人と急激に増えています。
 これは第二次世界大戦中のジャーナリストの死者数と同程度と言われています。
 このような報道の自由が脅かされることを警告するために、世界の210カ国を対象に、報道が政治に左右されない状況と、国民の権利が守られている状況をそれぞれ7点満点で採点し、それを100点満点に換算して順位をつけている「フリーダムハウス」というNGOがあります。
 その2018年版を調べてみると、100点満点のスウェーデン、ノルウェイ、フィンランドから、−1点のシリア、1点のチベットまで並んでいます。
 日本は96点で12位ですが、気になる朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は3点で207位、中国は14点で186位、ロシアは20点で179位です。
 トランプ大統領がマスメディアを批判しているアメリカは86点で54位です。

 アメリカの大統領選挙ではインターネットを利用したSNSが重要な役割を果たしましたが、同じ「フリーダムハウス」が65カ国を対象にしたインターネットの自由度を評価しています。
 最新の2017年版によると、もっとも自由が0点でもっとも不自由が100点で示されていますが、分かりにくいので、100点から引き算をして、もっとも自由を100点、もっとも不自由を0点にしてご紹介します。
 スカンジナビア3カ国が対象になっていないなど、やや実情とは離れているかと思いますが、上位は1位がアイスランドとエストニアで94点、下位は中国が13点で65位(最下位)、エチオピア、シリアが14点で64位、イランが15点で62位となっています。
 日本は77点で7位、アメリカは79点で6位となっています。

 報道が自由であるということは社会の透明性が高いということにつながりますが、「国際透明度」とでも訳す「トランスペアレンシー・インターナショナル」というNGOが世界の180カ国を対象に社会の透明性を100点満点で評価して発表しています。
 その2017年版によると、1位からニュージーランド、デンマーク、フィンランドと続き、アメリカが16位、日本は20位である一方、中国が77位、ロシアが135位、北朝鮮は171位となっています。

 これら3種の国際評価を見ると、日本は報道が自由な社会と言えますが、問題は国民が自覚しているかということではないかと思います。
 公益社団法人・新聞通信調査会が今年1月にアメリカ、イギリス、フランス、中国、韓国、タイの6カ国の、それぞれ約1000人を対象にした「諸外国における対日メディア世論調査」を行い、つい先頃、その集計結果を発表しました。
 その結果の中に今日の内容に関係する質問が3つあります。
 第一は「報道の自由」についての質問で、「報道の自由は常に保障されるべきだ」という項目について、フランスは93%、韓国は92%ですが、日本だけは昨年の回答ですが、83%で中国の81%に次いで少ない比率です。
 「現在の報道を見ていると政府から圧力をかけられても仕方がないと思う」という質問には、中国が80%、タイが77%は想像の範囲内ですが、意外なのはアメリカが53%になっていることです。日本は42%で最下位になっており、他の国に比べて健全な感覚があるという印象です。

 第二は「フェイクニュース」についての質問で、「フェイクニュースという言葉を知っているか」という質問について、「知らない」という人の割合は、中国が7%、イギリスが11%、アメリカが17%であるのに、日本は33%と7カ国で最大でした。
 「ニュースに接する時にフェイクニュースかどうかを意識しているか」という質問には、アメリカの83%が意識しているという回答はフェイクニュースの本場として当然ですが、フランスの76%、イギリスの74%に比べて、日本は41%でしかありません。

 第三は「ネットニュースについて、その出所を気にするか」という質問についても、「いつも気にする/まあ気にする」という比率がタイの92%、フランスの80%、アメリカの78%であるのに比べて、日本は42%という驚くほど低い比率です。

 今日は報道の自由について、世界と比較した日本の状況をいくつかの調査結果によって紹介してきました。
 現状では日本は報道の自由もインターネット利用の自由も守られている社会だということは確かですが、それが世界全体の中では恵まれていることをそれほど実感せず、またそれを守るという意識が十分ではないということではないかと思います。





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