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論文

 1月末に、世界自然保護基金(WWF)が、地球温暖化によって北極の氷が早く解け始め、遅くしか再結氷しないようになり、ホッキョクグマが絶滅の危機に在るという発表をしました。
 ホッキョクグマは獲物の少ない季節でも生命を維持するために、食物の豊富な春に集中してアザラシなどの獲物を捕らえ体脂肪を貯えるのですが、氷が早く解け始めると陸地へ移動するのが早まり、貯える脂肪の量が減ってしまうそうです。
 実際、カナダの北極圏での調査によると、ホッキョクグマが陸地に移動する時期が1週間早まると体重が10キログラム軽くなるということですし、栄養不足のために、コグマの死亡率も最近では44%になり、生まれたコグマの半分近くが死んでしまう状況になっているそうです。
 地球温暖化への対策が行われないと、20年後には大気の温度が250年前より2度上昇するという予測があり、北極の結氷する範囲が20%以上も減るという予測もあります。
 そこで色々な努力をする必要があります。昨年暮れに水を節約すれば環境問題の解決に貢献すると同時に経済的にも得をするという話をさせていただきましたが、同じように環境に貢献して得をするという話をさせていただこうと思います。

 どの家庭にもファクシミリ装置があると思いますが、あの装置は1日に1−2回しかファクシミリが送られてこなくても、1日中電気が通じています。このような電力を「待機電力」、すなわち「スタンバイ・エレクトリシティ」といいます。
 このような待機電力を使用している装置は、テレビジョン受像機、ビデオテープやDVDのプレーヤー、衛星放送チューナー、暖房装置付便座など、家庭の中にたくさんあります。これらの大半は使っていない時間のほうが多いのですが、その間にも電気を消費しています。
 これが、どの程度の電力になるかという計算をしてみると、留守番電話で4・5ワット、ファクシミリ付き電話で3・8ワット、パーソナルコンピュータで2・8ワット、空調機器で2・4ワット、親子電話の子機で1・3ワットなどになり、普通家庭にある電化製品や情報機器の待機電力の合計は45キロワットにもなります。
 これに1年間の8760時間を掛け算してみると、400キロワット時にもなり、家庭で使用する電力の10%から15%、電気代では約1万円です。

 生活が便利になるということは矛盾を抱えているわけです。
 例えば、便所でお尻を洗う便器が普及していますが、最近では家庭の50%以上に普及しているようです。世帯数は4860万世帯ですから、約2430万台が普及していることになります。
 この装置の出力は450ワット程度から1キロワットですが、控え目に500ワットとして、皆さんが通勤に出かける前に利用が集中するとして、30%の機器が一斉に使われるとすると、その電力消費は360万キロワットになります。
 もちろん単純な計算ですが、原子力発電所の発電能力を100万キロワットとすると、皆様が気持ちよく便所から出てこられるために、原子力発電所4基がフル稼働しているということになります。

 そこで待機電力を減らすためには以下の方法があります。
 第一に、使用しないときにはメインスイッチを切っておくことです。例えば、テレビジョン受像機であれば、寝る前にはメインスイッチを切るようにします。
 第二に、使用しないときにはプラグをコンセントから抜いておくことです。例えば旅行などで何日間か家を空けるときには、暖房便座のプラグを抜いておけば、待機電力はゼロになります。
 第三は、待機電力がわずかな機器が発売されているので、それを使用することです。例えば、家庭電化製品のメーカーが待機電力の少ない商品を開発していますし、NTT−ATが発売した「節電虫(セツデンムシ)」という装置もあります。
 この装置はファクシミリ本体の電力線と通信線を接続しておくと、送受信の信号を感知して自動的に電源スイッチを入れ、受発信を終了すると、また、自動的に電源を切ってくれます。実験結果では、この装置を取り付けることによって電力消費は80%以上節約されます。
 現状では装置の値段が1万2000円程度で、節約できる電気代は年間600円程度ですから金銭的には得にはなりませんが、地球温暖化を防ぐために貢献しているという満足で補ってほしいと思います。





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