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論文

 先週は雨が降らないために世界各地で砂漠が拡大しているという話をさせていただきましたが、現在、東アジアは雨期に入っており、洪水の被害が各地で発生しています。
 中国の広東省では大雨のため、先週の6月12日に大規模な洪水が発生して、70名以上が亡くなり、60万人近い人が避難しています。
 その1日前には、南半球のオーストラリアのシドニー北部でも嵐による洪水が発生し、死者は発生しなかったものの、数千人の住民が避難しました。
 自然はなかなか適度というわけにはいかず、色々な災害を引き起こします。
 日本では「地震、雷、火事、親爺」という言葉があり、恐ろしい災害の順番を表しています。最近は夫を殺す妻や、父親を殺す息子などが続出で、親爺は完全に圏外に追い出されていますが、それ以外の自然災害がどの程度、恐ろしいかを調べてみたいと思います。

 英語版の『ナショナル・ジオグラフィック』という雑誌の昨年8月号に、その恐ろしさを示す興味深い資料が掲載されました。
 アメリカ安全委員会(National Safety Council)が2003年のデータをもとに、アメリカ人はどのような原因で死ぬかを調べたもので、すべての死因を合計して100%とすると、1位が心臓病で20%、2位がガンで14・3%、3位が発作で4・1%となっており、地震は21位で0・00085%、雷は20位で0・0013%、火事が11位で0・09%という状態です。
 それ以外に、現代社会では様々な交通事故の危険がありますが、自動車事故が1・2%で4位、歩行者が交通事故で死ぬ場合が0・2%で8位、二輪車の事故が0・1%で10位、自転車の事故が0・02%で12位、航空機事故が0・02%で13位です。
 これら交通事故を合計しても1・5%にしかならず、現代は「地震、雷、火事」の天災よりも、また交通事故よりも病気が一番怖いということになります。

 日本ではどうかということで、厚生労働省の2006年の統計をもとに計算してみると、やはり病気が圧倒的に多く、1位はガンで33%、2位は心臓病で17%、3位は脳溢血など脳の病気で11%、4位が肺炎で10%と、4大疾患だけで70%にもなります。
 交通事故を含む事故はすべて合計しても3・4%ですから、やはり病気が怖いということになります。

 もうひとつ寿命に関する興味深い統計があります。これは1979年という30年近く前に、アメリカのバーナード・コーエンという学者が発表し、1991年に改訂版を出した「危険のカタログ」という論文ですが、人間の日常生活のなかで、どのような行動がどれだけ寿命を縮めるかを計算したものです。
 第1位は生活水準が低いという原因で3500日ですから9年半ほど寿命が短くなるということです。これはアメリカの社会事情を反映したもので、国民の4割は健康保険に入っていないため、貧しいと簡単に病院で医療が受けられないということの影響が大きいと思いますし、危険度の高い仕事に従事する比率が高いということもあると思います。
 第2位は興味深い原因で、男性が独身のままでいると3000日、8年以上も寿命が縮むということです。日本には「男やもめに蛆が湧く」という言葉がありますが、生活が不規則になり、食事が偏ったりすることの影響だと思います。
 2005年の国勢調査によると、20代の男性の71%は未婚、30代前半になっても47%が未婚という状態なので、アメリカとは多少事情が違うとは思いますが、現在、独身で、ぜひ長生きしたいと思っておられる方は結婚を急がれるのがいいと思います。
 それでは女性が独身でいるのはどうかということですが、これは1600日、4年半ほどになっています。男性に比べれば半分ほどですが、やはり長生きしたいと思われる独身女性は結婚を目指されたらと思います。
 ちなみに女性も20代では60%、30代前半でも32%が独身という状態です

 このような原因に比べると、我々が普通に危険だと思う原因は意外に影響が少なく、お酒の飲み過ぎは365日、せいぜい1年ですから、適度に飲めば問題ないし、自動車事故で寿命が短くなる場合も207日、火事による影響が20日、竜巻が0・8日、雷が0・7日となっています。
 こうしてみると「地震、雷、火事」よりも恐ろしいものは世間に多数あるということですが、今日ご紹介した数字はアメリカの社会での平均ですから、日本では事情が違いますし、たまたま10万人以上が亡くなった関東大震災のような大災害に遭遇すれば、このような数字は関係なくなります。
 「渡る世間は鬼ばかり」というほどではないにしても、やはり「災害は忘れた頃に来る」という言葉を想い出しながら生活することは必要だと思います。





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