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論文

 今年は平成時代が終わり、5月には新しい年号に変わるという区切りの年になりますので、改めて日本という国は世界の中でどのように評価されているかをご紹介したいと思います。
 どのような基準で評価するかについて、2人の識者の意見を参考にしたいと思いますが、最初はズビグネフ・ブレジンスキーの見解です。
 ブレジンスキーは一昨年になくなりましたが、1958年にアメリカの市民権を取得したポーランド出身の政治学者で、ジョンソン政権の大統領顧問、カーター政権の大統領補佐官を勤めています。
 彼が補佐官を辞めた後の1997年に、今後のアメリカの世界戦略を提案した『グランド・チェスボード』(日本語版『世界はこう動く・21世紀の地政戦略ゲーム』1998)という本を発表しています。
 これは世界各国をチェスの駒に見立て、アメリカがそれらをどのように戦略的に動かして行くかという内容ですが、その中にアメリカが1991年にソビエト連邦を崩壊させ、世界唯一の覇権国になった要因を説明しています。
 それは世界一の軍事力、経済力、技術力とともに、粗野ではあるが世界の若者を魅了して止まない文化力を獲得したことだと書いています。
 分かりやすい実例は大谷翔平選手や菊池雄星選手で、日本のプロ野球に飽き足らず、粗野ではあるが若者を魅了するメジャーリーグに行ってしまうという例です。

 その戦略を別の角度から説明しているのが、カーター政権の国務副次官、クリントン政権の国防次官補を務めたハーバード大学特別功労教授のジョセフ・ナイで、これからの国家の重要な力は軍事力や経済力のようなハードパワーではなく、ソフトパワーになると提言しています。
 そのソフトパワーの本質は魅力で、自国が必要とする人材、物資、資金、情報を引き寄せる力だと説明しています。
 そこで、この2人の意見を背景に、今後の世界で重要な国力となる文化力や魅力が日本には存在するかを調べてみました。
 今日は新年最初でもありますので、魅力や文化力が不足しているダメな日本ではなく、十分にあるという素晴らしい日本を紹介させていただき、来週、ダメな日本を紹介させていただこうと思います。

 まず企業の社会での評判を調査している1997年設立の「レピュテーション・インスティテュート(評判研究所)」が昨年6月に発表したGDP(国内総生産)の上位55カ国の評判を調べた結果です。
 評価の主要な項目は「国民が外国人に親密である」「社会が安全である」「国土が美しい」「生活様式に特徴がある」「生活が楽しめる」など10数項目ですが、その結果、1位はスウェーデン、2位がフィンランド、3位がスイス、4位がノルウェイ、5位がニュージーランドで、移住するかどうかは別にして、観光旅行には行ってみたい国です。
 日本は8位ですが、昨年、12位でしたから向上したことになります。
 結果は100点満点のうち何点かで示されていますが、研究所の分析では、数値が1点上がれば外国人旅行者が0.9%増え、輸出金額が0.3%増えるそうで、日本は76.8から77.9に増えており、実際にインバウンドも増えています。

 魅力的である重要な要因の一つは国内が平和であることですが、それを中心に評価した順位もあります。
 「インスティテュート・フォア・エコノミクス・アンド・ピース」という研究所が発表している「世界平和指標」の2018年版を見ると、168カ国を対象にして、1位がアイスランド、2位がニュージーランド、3位がオーストリア、4位がポルトガル、5位がデンマークで、日本は昨年の8位から9位に下がりましたが、1桁を維持しています。
 これは紛争、安全、軍事の3項目で評価した結果ですが、日本は紛争では45位、安全では6位、軍事では19位で、際立って平和というわけではありませんが、それらの総合で9位になっています。
 参考までに中国は112位、アメリカは121位、ロシアは154位ですから、大国が平和を維持するのは容易ではないということを示しています。

 アメリカで発行されている「USニューズ」という時事問題を対象にしている雑誌が発表している「最良国家」という評価もあります。
 世界65カ国を対象に「人権が保護されている」「文化の影響力がある」「生活水準が高い」「ビジネスが開放的である」など9の評価項目で順位をつけています。
 2018年版の順位は1位スイス、2位カナダ、3位ドイツ、4位イギリスで、日本が5位に登場します。
 アジアではシンガポールが16位、中国が20位、韓国が22位、インドが25位などですが、日本は大健闘です。

 最後に、その名も「世界の魅力的な国ランキング」という評価があります。
 これはアメリカのブランド戦略会社とウォートンスクールが共同で実施した調査で、世界の60カ国を対象に66項目の評価基準で判断しています。
 結果は1位がドイツ、2位がカナダ、3位がイギリス、4位がアメリカ、5位がスウェーデンで、日本は7位に入っており、アジアでは他に15位がシンガポール、17位が中国、19位が韓国です。

 いずれも日本が1桁の順位に入っている評価を紹介してきましたが、日本は全体的に魅力的な国家ということになります。
 これは気分がいいというだけの結果ではなく、日本は外国からの観光客を来年までに4000万人に、2030年までに6000万人という観光大国を目指していますが、そのためには外国人から魅力的な国だと評価されることが重要です。
 また労働人口不足を補うために入国管理法を改正して外国人労働者の受け入れ拡大を目指していますが、これも働くのに魅力的な国だと海外から評価されることが重要です。
 その意味で、今日は新年のご祝儀として高い評価のみをご紹介しましたが、そうではない、反対の評価も数多くあるということを、来週、ご紹介したいと思います。





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