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論文

 先週は日本が魅力ある国だということを、色々な調査結果を使ってご紹介しましたが、今週は、安心してはいけない、魅力のない国だという評価も多数あるということをご紹介したいと思います。
 先週の番組をお聞きいただかなかった方々のために、簡単に先週の内容を復習しておきたいと思います。
 現在、世界は大変な変化に直面していますが、その変化する時代に最も重要な国力は何かという議論が20世紀末から行われており、なるほどと思われる意見は、軍事力や経済力ではなく、文化力であり、その本質は魅力だという内容です。
 魅力の本質は必要とする人材、物資、資金、情報を自国に引きつける力ということです。
 その魅力の視点から日本の評価を調べてみると、国際的な評判では55カ国中8位、平和な国家かどうかでは168カ国中9位、魅力的な国であるかどうかという評価では60カ国中7位というように、1桁の順位の評価が多数あります。
 しかし、すべてが日本は素晴らしいという評価ではなく、反対の評価も同様に多数あります。

 ロンドンを本拠とする「レガタム・インスティテュート」というシンクタンクが「繁栄指数」という評価を発表しています。
 これは世界の149カ国を対象に「経済の質」「企業活動の環境」「個人の自由」「社会の安全」「健康」など9項目を使って、今後、繁栄する可能性を評価し、国の順番を決めている調査です。
 2018年の結果は、1位がノルウェイ、2位がニュージーランド、3位がフィンランド、4位がスイス、5位がデンマークで、日本は残念ながら、一昨年も昨年も23位でした。
 日本は「社会の安全」で2位、「健康」で3位と高い評価ですが、社会の信頼関係などを意味する「社会資本」が99位、「自然環境の保護」が39位と低い評価で、それが影響しています。

 この社会資本が低く見られている重要な要因の1つは男女格差が大きい社会だということです。
 昨年12月にスイスにあるシンクタンク「世界経済フォーラム」が発表した4つの指標で計算する「ジェンダー格差指数」の順位で、日本は149カ国のうち110位でした。
 順位を下げている大きな要因が4つの指標の1つ「女性の政治参加」です。
 その代表が列国議会同盟(IPU)の発表している国会議員の女性比率で、日本は13.7%で193カ国中160位でした。
 1位のルワンダは半数以上を女性とするクオータ制を導入しているので55.7%と別格ですが、30%以上の国が43カ国もある中で異常な状態です。
 女性の閣僚比率も1位のフィンランドは62%ですが、日本は20人中1人の5%ですから、これも世界の現状からはかけ離れています。
 それ以外に女性医師の比率も、OECD加盟国で1位のエストニアは73%が女性、OECD平均が39%ですが、日本は最下位で20%でしかありません。
 日本の医学系大学の入学試験の男女差別が問題になっていますが、この数字が問題を象徴しています。

 幸福についても日本は低い評価です。
 幸福は人さまざまですから数字1個で表すことには違和感があると思いますが、多くの調査で低い評価になっています。
 国際連合が毎年発表する「世界幸福報告書(WHR)」の2018年版では、日本は156カ国中54位となっていますが、これはそれぞれの国民に0から10で点数をつけてもらった平均値ですから、楽観的な国民か悲観的な国民かによって左右される数字です。

 そこでロンドンにある「ニューエコノミクスフォーラム」による「幸福惑星指標」を見てみます。
 これは「国民の満足度」「平均寿命」「国民の不平等感」「環境への負荷」を使って計算した数値で、日本は140カ国中58位ですから国連の報告と一致しています。

 38のOECD加盟国のみを対象に「住宅事情」「教育水準」「健康状態」「安全」など11項目で評価した「ベターライフ指標」では日本は23位で、点数でも最高のノルウェイの7割程度の点数です。
 さらに幸福に直接関係するかは明らかではありませんが日本は自殺率の高い国です。
 2016年の世界保健機構(WHO)の調査では、184カ国中、日本は多い方から14位で、特に女性は8位という高い順位です。

 先週、ご紹介した魅力ある国としての日本と魅力のない国としての日本の両面がありますが、これをどのように解釈し、国としても個人としても、これからどのような社会を目指すかが重要になります。
 第一は自殺率のような明確な数字で示される順位は例外として、繁栄にしても幸福にしても男女平等にしても西欧社会の基準で評価されていることです。
 それでも日本がアジア諸国の中では上位にあるのは150年以上の西欧社会を目指した歴史があるからで、この明治150年を契機に、社会の規範が西欧社会の追随のままでいいのかを見直す機会にすべきだということです。
 最近の世界規模の観光ブームでは、日本が維持してきた伝統文化が高い評価を得ていますが、そのような日本独自の特徴と世界共通の価値観の調和を目指すことが、これからの日本の課題になると思います。
 第二は魅力ある国の上位は人口1000万以下の小国が多いことです。
 北欧諸国は魅力ある国の様々な評価で上位を占めていますが、スウェーデンは960万人、デンマークは560万人、フィンランドは540万人、ノルウェイは500万人、それ以外の上位の常連のスイスは810万人、ニュージーランドも450万人です。
 それらの国は、例えばフィンランドは「森と湖の国」、スイスは「平和の国」というように国を一つのまとまったイメージで外部に訴えることが容易で、それが外部に魅力として伝わっています。
 しかし、億単位の人口を抱える国は地域が広大であったり、多民族国家であったりし、単純なイメージで訴えることは困難です。
 これは大国にとって不利な条件のようですが、21世紀は多様性(ダイバーシティ)が社会にとって重要な概念になりますから、日本も多様性を生かしながら魅力を発揮する国を目指すべきだと思います。





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