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論文

 新年になると干支(かんし/えと)というものが登場します。今年は丑年ということで、年賀状にも牛の絵が氾濫しています。
 干支というのは「甲乙丙丁・・・」という十干と、「子丑寅卯・・・」という十二支から成っていますが、いずれも今から3500年ほど前の中国の殷の時代に作られた暦法、すなわち時間を数える方法で、両方を組合せて一年を数えていたのですが、次第に占いにも使われるようになったと言われています。
 この十干と十二支を組み合わせると60種類の組み合わせができ、「壬申の乱(672)」とか「戊辰の役(1868)」というように、年号を表す符号として使ってきました。

 今年は「己丑(つちのとうし)」で昨年は「戊子(つちのえね)」でした。
 十干十二支を解説した書物によると、諸説ありますが、「戊子」は「諸問題が続出し社会が混乱し抗争が発生する年」と書いてあり、国内の政治もその通りでしたし、サブプライム問題から始まった世界規模の大不況を思い出すと、当てはまっています。
 それでは今年の「己丑」はどうかと解説を読んでみると、「己」という文字には「乱れを正して治める」という意味、「丑」という文字には「前年に発したものを整える」という意味があり、一体にすると「戊子の年に発生した混乱や抗争を正して整える」という意味になるようです。
 何となく出来すぎた説明のようですが、干支に関係なく、国内政治も国際社会も混乱を整える努力をすべき年であることは間違いないと思います。

 この干支は60年経過すると一巡します。すなわち還暦です。
 そこで世の中を調べてみると、60年周期で繰り返すとか、60年毎に発生するという現象が色々あります。
 自然現象では「竹は60年周期で花を咲かせ一生を終える」とい俗説があります。
 これまでの記録ではモウソウチクが67年目に開花した例が2例あるだけで、それほど当てはまる数字ではないのですが、マダケについては昭和40年代に日本だけではなく世界各地で120年ぶりに開花した例があり、60年の2倍の周期で異変が発生しています。

 地震についても60年前後の周期で発生するという説があります。
 有名な例は1970年に東京大学の河角広教授が江戸時代の震度5以上の地震を調査し、平均69年、標準偏差13・2年で南関東には地震が発生していると発表し話題になりました。
 しかし、1923年に発生した関東大地震からすでに85年が経過しても発生していないので疑問視されていますが、地下で大陸のプレートが他のプレートの下に潜り込んで、その歪みが一定以上になったときにプレートが跳ね上がって地震が発生するので、ある周期で発生するということは確実です。

 今年はインフルエンザが流行するという警告が出されていますが、このインフルエンザについても60年周期説があります。
 これまでのインフルエンザの流行を調べてみると、1918年に世界で4000万人から5000万人が死亡したスペイン風邪、1957年に200万人から400万人が死亡したアジア風邪、1968年に50万人から100万人が死亡した香港風邪、1977年に発生したソ連風邪などが発生しています。
 どこから数えるかによりますが、平均寿命を60年程度とすると、60年も経過すると以前のインフルエンザの免疫保有者がいなくなり、大流行が発生すると推測されています。

 社会現象についても60周期説が色々とあります。
 古典的な有名なものは「コンドラチェフの波」と言われる景気変動の周期です。
 ニコライ・コンドラチェフというソビエト連邦の経済学者が、イギリス、フランス、アメリカの経済活動に関する長期資料を分析し、資本主義経済は50年から60年の周期で景気が上下するという説を1926年に発表しています。
 この周期を当てはめた『2005年日本浮上』という本も出版されていますが、現状を見ると、そうとも思えず、社会現象の予測は難しいということを実感します。

 このように60年周期説は様々な分野に登場していますが、60という数字には特別の意味があるかどうかが気になります。
 例えば、木星の公転周期は11・862年でほぼ12年、土星の公転周期は29・458年でほぼ30年ですから、最小公約数である60年毎に同じ位置関係になります。
 木星と土星の質量は太陽系の惑星の質量の合計の90%以上ですから、影響があるかもしれません。

 参考に、60年前の昭和24(1959)年を調べると、前年の「戊子」の年に昭和電工疑獄事件が発生して政財界人の検挙、衆議院の解散があり、まさに混乱と抗争の年でした。そして「己丑」になると、国内では通商産業省や郵政省・電気通信省が設置され、国際的には1ドル360円の固定為替制度が出来て新しい時代を作り初めています。
 さらに120年前の明治22(1889)年には。大日本帝国憲法が発布され、対外的にも不平等条約の改正の動きが活発になるなど、大きく社会を整えはじめた年になっています。
 人間の社会ですから、きれいに60年毎に変化する訳ではありませんが、一つの社会の理解の仕方として干支を振り返ってみるのもいいのではないかと思います。





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