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論文

 先月の木曜日2月26日から東京23区、横浜と川崎の一部で、KDDIやインテルなどが出資するUQコミュニケーションズが「WiMAX(ワイマックス)」という新しい無線データ通信の試験サービスを始めましたので、今日は、このワイマックスをはじめとする無線データ通信の最新状況についてご紹介したいと思います。

 現在の社会ではインターネットなどのデータ通信がなければ1日も生活できないほど、データ通信に依存していますが、この分野は技術革新が急速ですし、それに対応した新しい通信サービスも次々と登場して追いかけるのが大変です。
 そこでまず、ワイマックスに至るまでのデータ通信技術全体の進化を眺め、それからワイマックスについて説明したいと思います。

 データ通信の利用は大別すれば、特定の場所でおこなう固定通信と、移動しながら自由に通信する移動通信とに分けられます。
 固定通信の場合は、毎秒数10キロビット程度のISDNから始まり、数メガビットのADSL、そして光ファイバーを利用する100メガビット程度の通信を可能にするFTTHへと発展してきました。
 10年ほどで1000倍以上に通信速度が上がったことになり、ADSLやFTTHの利用者も日本では人口の20%を超え、ブロードバンド時代になりつつあります。

 移動通信の場合は携帯電話かPHSを利用することになりますが、携帯電話は1990年代には毎秒2・4キロビット、その後、毎秒9・6キロビットになり、現在の第三世代で1メガビットの程度速度になっていますが、固定通信に比べれば100分の1程度です。
 またPHSは100キロビット程度ですから、これも高速の固定通信に比べれば1000分の1程度の通信速度です。
 固定であれば高速ではあるけれども移動しながら通信できない、移動であればどこでも利用できるけれども通信速度が遅いという、「帯に短し襷に長し」というのがこれまでの実情でした。
 そこで両者の長所を生かし、移動しながら高速の通信を可能にするという分野を開拓しようというのがワイマックスと理解していただいたら良いと思います。

 これまでワイマックスと言ってきましたが、ローマ字で「WiMAX」と書き、ワールドワイド・インターオペラビリティ・フォー・マイクロウェーブ・アクセスの頭文字を集めた略語で、世界共通の無線通信という意味です。
 これに似た名前で、ワイファイ(WiFi)という通信技術があります。これは無線LANといわれる技術の一種で、家庭やオフィスの内部で端末装置からネットワークにアクセスする短距離の通信ですが、ワイマックスは屋外で移動しながら高速の通信を可能にする技術です。
 実際、どの程度の通信が可能かというと、まず通信速度は現在40メガビット程度ですが、将来は倍の80メガビットまで可能になりますから、FTTHに匹敵するほどになります。
 もう一つの重要な特徴が高速で移動しながらでも通信ができるということで、技術の仕様では時速120キロメートルで可能ですが、実験では時速200キロメートルでも可能なので、高速道路を走る自動車でも、新幹線の中でもユーチューブの動画を乱れることなく見ることができる程度の性能です。

 現在は無料の実験サービスで、最初にもご紹介したように、東京23区と横浜、川崎の一部の地区だけが対象ですが、7月からは三大都市圏で月額4480円の定額サービスを開始する予定で、2012年度末までには全国で利用できる計画です。
 もう一つの重要な特徴は世界の広範な地域で利用可能になるということです。
 携帯電話もローミングサービスによって、世界各地で国内と同様に使うことが可能になっていますが、ワイマックスは世界の500数十社が参加したワイマックス・フォーラムで技術使用が決められ、現在、世界の110カ国以上でサービスを開始する準備が進んでいますので、日本で使用している端末装置を持っていけば、色々な国で日本と同様に通信することが可能になります。
 例えば、台湾は国家が「高速通信アイランド」を目標とし、すでに一部の地域では商業サービスが始まっており、やがては北の台北と南の高雄を結んでいる台湾新幹線の時速300キロメートルの車中でも利用できる構想を進めています。

 このようなサービスはワイマックスだけではなく、四月からはウィルコムがパナソニックやシャープなど60の組織と共同で、東京の山手線内部で次世代PHSのサービスを開始します。
 これは当面毎秒20メガビットのサービスを提供し、最終的には100メガビットを実現する予定で、地域も2012年度末には人口の90%以上の地域に拡大する計画です。
 またNTTドコモは2010年からエルティイー(LTE)という名前の高速無線サービスを開始する予定です。
 これはロングターム・エボリューション、すなわち未来を見据えた進化というような意味ですが、第3・9世代の携帯電話とも言われるように、携帯電話を基礎とした技術です。
 通信速度は端末装置で受信する下りと言われる状態で100メガビット、送信する上りといわれる状態で50メガビットを想定しています。
 まさに高速無線データ通信の時代の幕開けという状態です。

 最近は新幹線の中でもコンピュータを利用しているビジネスマンを見かけることが普通になってきました。
 新幹線に乗っているときくらいは、ゆっくり本を読んだりくつろいだりするほうが良いのではないかと思うこともありますが、ビジネスの世界では高速の通信手段を駆使することが勝負です。
 そう考えれば、これまでの携帯電話だけではなく、高速無線データ通信を利用することは重要なことですから、このような技術の動向を注目していただければと思います。





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