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論文

 一昨日9日に、九州、四国、中国、近畿、東海が梅雨入り、昨日10日に、関東甲信、北陸、東北南部が梅雨入りしたと気象庁が発表しました。
 梅雨の時期は外出するときに憂鬱という方も居られるかも知れませんが、それは罰当たりなことで、人間にとって水はもっとも重要な天然資源ですから、とにかく梅雨の到来はありがたいことです。
 日本には年間平均して1690mmの降水があり、量としては年間638立方km、琵琶湖の貯水量の23倍になります。
 この降水量のうち、梅雨や秋雨など普通の雨によるものが3分の1、台風による集中豪雨が3分の1、雪によるものが3分の1ですから、梅雨は重要な水源です。
 降水量のうち途中で蒸発する量が35%あるので、地上に到達するのは413立方kmですが、そのうち20%を使っているのに過ぎませんから、まだ余裕があると言っていいと思います。
 渇水期に一部の地域で水不足は生じますが、現在のところ、日本の水は大丈夫です。

 ところが最近、2つの大きな問題が発生しつつあります。
 第一は地球の気候環境の変化の影響で、降水量が減る傾向にあることです。
 降水量は年ごとの変化が大きく、1994年に日本列島全体が渇水の危機にあったときは年間1142mmでしたが、3年後の1998年は1915mmと1・7倍も開いています。
 しかし過去100年間の長期的な傾向を調べると、1900年には1660mmでしたが、2005年には1560mmと6%ほど減少しています。
 今後、地球温暖化の影響で、日本周辺の海面の温度が上昇して気候条件が変化すると、梅雨の発生する地域や台風の進路が変化して、日本列島に降る雨が減る可能性も心配されています。
 また冬の積雪が変化することも予想され、農業環境技術研究所が行った2100年の積雪状況の予測によると、12月から3月までの積雪の合計の深さが、日本海側では10mくらいから2〜3mに減る地域も登場しています。
 雪は「白いダム」とも言われ春先から梅雨までの水を補給してくれる重要な水源ですから、日本列島が水不足になる可能性もあります。

 第二の問題が隣国の中国の水不足です。
 中国の年間の平均降水量は627mmと日本の3分の1程度ですが、国土面積が日本の約25倍ありますから、降水量の総量は日本の9・4倍に相当する6000万立方kmになり、蒸発分を差し引いた水資源量も日本の6・8倍になります。
 しかし、人口が日本の10倍以上ですから、一人あたりにすると3分の2の2127立方mになってしまいます。
 これは別の見方をすると、分かりやすいのですが、中国の人口は世界全体の人口の20%程度ですが、水資源量は世界全体の5%にしかなりません。
 しかも、この水資源の多くが南部に集中しており、政治や経済が集中している北部に少ないため、様々な問題が発生しています。

 川の長さでは世界の7番目になる黄河が中央を流れる華北平原は、中国の穀倉地帯ですが、大量の水を地下から汲み上げて農業に利用しているために毎年、地下水位が1m低下していますし、北京の郊外でも地下水を汲み上げすぎるため、一年に10cmも地盤沈下している場所もあります。
 また、黄河からも大量に取水している結果、河に水が流れない「断流」という現象も発生するようになっています。
 最近では減りつつあるようですが、1997年には1年の6割にあたる226日も断流が発生し、そのような影響もあり、黄河に棲息していた130種類の魚のうち、3分の1が絶滅してしまいました。

 その結果、中国では1997年から2004年の8年間でペットボトルに詰めたミネラルウォーターの需要が4倍に急増しており、100億リットルになっています。
 日本のミネラルウォーターの需要が2007年で25億リットル程度ですから、人口が多いことを考えても大変な量です。

 もちろん対策は考えられています。もっとも大規模な対策は「南水北調」、南部の水を北部で利用する大土木事業です。
 先程もご説明しましたが、中国の水資源は南部では豊富ですが、北部では不足気味です。そこで、南部から北部へ数千kmにもなる運河を3本掘削して、南部の水を北部へ導水しようという大計画です。
 1950年代から計画され、2002年から工事が始まっていますが、三峡ダムを超える大工事になります。

 これは中国国内の問題ですが、日本に影響が及んでいる問題があります。
 一部の新聞や雑誌に書かれていますが、中国の企業が日本の森林を大規模に買収しようという活動が始まっていることです。
 日本は値段の安い外材を輸入するという選択をし、木材の自給比率は20%程度になってしまっていますが、その影響で日本の木材が売れず、下草刈りや旱魃をする人も金もない状態になり、森林が荒廃しています。
 立木を伐採して売っても、その伐採費用にもならないという森林もあります。そういうところへ中国の企業が市価の10倍程度で買収するという話を持ちこんでいるようです。
 日本の民法207条では「土地の所有権は土地の上下に及ぶ」ことになっていますから、森林を購入すれば、立木だけではなく、地下水を汲み出して海外に持ち出すことも可能で、それを狙っているのではないかと言われています。
 現在のところ、売買された実例の確認は無いようですが、水は人間の生存にとってもっとも重要な資源ですから、森林政策を根底から見直す必要があると思います。





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