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論文

 来週の9月1日は防災の日です。ご存知のように1923(大正12)年9月1日に関東大震災が発生したことに因んだ記念日です。
 この関東大震災では死者と行方不明者の合計が14万2800人にもなるという大災害でしたが、様々な災害による死者を調べてみると、やはり戦争によるものが圧倒的多数で、第二次世界大戦のときの死者が5355万人、第一次世界大戦のときが2600万人と推定されています。
 それ以外では、最近の脅威になっているインフルエンザの流行による被害が多く、第一次世界大戦のときに流行したスペイン風邪(H1N1型)では、世界で4000万人から5000万人が亡くなり、1957年に流行したアジア風邪で約200万人が亡くなっています。
 しかし、関東大震災のような自然災害を調べてみると、2大災害は台風と地震です。
 台風では1970年にバングラディシュを襲ったサイクロンにより約50万人、1991年にやはりバングラディシュを襲ったサイクロンで約14万人が亡くなっています。
 地震では1976年に中国で発生した唐山地震で約25万人、やはり中国で1920年に発生した甘粛省での地震で約20万人が亡くなったという記録が残っています。

 日本でも同様に、台風と地震が自然災害の2大原因で、台風では1959年の伊勢湾台風で5098人、地震では関東大震災を除くと1995年の阪神淡路大震災で6437人が記録となっています。
 そして今後を考えると、やはり脅威は新型インフルエンザと直下型地震です。
 新型インフルエンザによる日本での死者数は昨年7月に厚生労働省が発表した推定によると、最大64万人となっていますが、一部の専門家は600万人という数字も挙げています。
 スペイン風邪のとき日本の死者は39万人から48万人と推定されていますから、それ以上になります。

 今日は防災の日に関連して地震対策についてご紹介したいと思います。
 日本が地震災害対策を真剣に検討しなければいけない理由はいくつかありますが、第一は残念なことに、地震の発生が多い国だということです。
 1980年から2000年について、マグニチュード5・5以上の地震が1年に何回発生したかを調べると、日本は中国、インドネシア、イランに次いで4番目ですし、国土面積あたりで計算しても、コスタリカ、キプロス、アルバニア、エルサルバドル、ギリシャに次いで6番目になります。
 第二は日本は国土面積の30分の1の土地に人口の3分の2が生活している高密度国家だということです。日本の人口密度を国全体で計算すれば世界の10番以下ですが、都市部分だけで計算すれば、モナコ公国に次いで2番目に高い人口密度で生活している国です。
 第三は木造住宅が密集している地域が多く、地震から火災が発生して被害が拡大するという状態になっているということです。

 このような状況の中で、1995年に阪神淡路大震災が発生し、6000人以上の方々が亡くなったということで、2年後の1997年に「密集市街地整備法」という法律が作られました。
 役所は何事も難しく表現するので、正式には「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」という124条からなる法律です。
 まず密集市街地とは何かということですが、古い木造住宅が密集しており、延焼を防止したり、避難するための道路や公園や緑地が整備されていない地域です。
 そこで1ヘクタールの面積に60戸以上の建物があり、そのうち半分以上が古い木造住宅であるところを密集市街地として定義し、全国で調査をしたところ約2万5000ヘクタールの密集市街地があり、そのうち東京と大阪にそれぞれ約6000ヘクタールが存在していることが分かりました。
 すなわち半分が二大都市に集中しているということです。
 ちなみに2万5000ヘクタールとは日本で2番目に大きい湖の霞ヶ浦より一回り広く、6000ヘクタールとは十和田湖と同じ面積です。

 そこで2001年に都市再生プロジェクトが決定され、それらの地域を10年以内に最低限の安全性を確保できるように整備することが決まりました。
 具体的には何をするかということですが、平屋や二階建ての木造住宅が建ち並んでいる地域の容積率を上げて高層の建物にし、それによって空いた場所に広い道路を通し、いざというときに避難できる防災公園を作るということです。
 実際、墨田区の曳舟駅前地区という地域では4年前から工事が進んでいますが、これまで100%であった容積率を400%から500%に上げて830戸の高層の耐火住宅を建て、敷地の12%程度であった道路面積をほぼ2倍の22%にする計画です。また大型商業施設も建設され生活も便利になります。
 このような都市再開発は独立行政法人都市再生機構や大手の開発事業者によって進められていますが、防災の第一歩は自分で守るということだと思います。
 一昨日は、たまたまメンテナンスの不備で緊急地震速報が誤って発信されましたが、あのような技術が実用になっているのは日本だけですし、しかも個人の携帯電話にも無償で配信される優れたサービスです。
 残念ながら、日本は地震の多い地域で、日本で生活している限り、地震から逃れることはできません。
 防災の日をきっかけに改めて、水や非常食の備蓄をし、いざという時に何処に避難するかを普段から確認したりすることが重要ではないかと思います。





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