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論文

 春一番の吹く季節に入ってきました。春一番というのは江戸時代の中頃から使われていた言葉のようですが、江戸末期の安政6年(1859)に長崎県壱岐の島の漁師が漁をしていた時、強い南風が吹いて漁船が転覆し、53名が亡くなった事故があり、これを春一番と呼ぶようになったという説が流布しています。
 現在では、2月初旬の立春の日から3月後半の春分の日までで、最初に吹いた秒速8メートル以上の南から北への風を呼ぶことになっています。
 この春一番だけではなく、突然の強風が吹くと「風が吹けば桶屋が儲かる」という論法が思い出されます。
   ご存知の方も多いかと思いますが、
   1)大風が吹くと土埃が立つ
   2)その土埃が目に入って盲人が増える
   3)盲人は仕事のために三味線を買う
   4)三味線に必要なネコの皮を確保するためにネコが殺される
   5)ネコが減ってネズミが増える
   6)ネズミは木桶をかじる
   7)そこで桶屋が儲かる
という論法で、18世紀中頃の浮世草子に登場した言葉と言われています。

 このように途中を省いて、最初と最後だけを繋げるとなかなか興味深い社会現象の表現になります。
 そこで現代の「風が吹けば桶屋が儲かる」を探してみました。
 「イギリスがEUを離脱するとペンギンが減る」というのはどうでしょうか?
 1982年に、アルゼンチンが南大西洋にあるマルビナス諸島と呼んでいたフォークランド諸島の領有を巡って、イギリスとアルゼンチンの間で2ヶ月半の戦闘があり、結果はイギリスが領有することになりました。
 ここには5種類の、合計すると100万羽以上のペンギンが生息していますが、そのペンギンの保護のためにEUが資金提供をしている仕組みがあります。
 しかし、イギリスがEUを離脱すると、その資金提供がなくなる可能性があり、ペンギンの保護が従来のようにはできなくなるかもしれないのです。
 それ以外にもキューバの南側にあるケイマン諸島や西大西洋にあるバミューダ諸島などのイギリス領もペンギンが生育していますが、EU離脱でイギリスの経済が不調になれば、保護資金が減る可能性があり、ペンギンは影響を受けるというわけです。

 地球温暖化は世界の自然環境だけではなく社会環境を大きく変えますが、「地球温暖化が進むと世界旅行が高価になる」という説もあります。
 地球温暖化が進んで空気が暖かくなると膨張しますから密度が小さくなり、飛行機の浮揚力が低下します。
 アメリカの航空宇宙局(NASA)やコロンビア大学が世界の19の主要空港について調査したところ、すでに気温が最も高い時間帯には最大離陸重量を下げて荷物や乗客の搭載を制限していることが分かり、一部の空港では滑走路を延長しないと離陸できないという予測もされています。
 実際にアメリカのアリゾナ州フェニックスでは6月、7月、8月の最高気温が40度を超え、2日間で50便以上が離着陸を中止しています。
 韓国の仁川国際空港の第3滑走路は、そのような時代を見越して滑走路の延長を4000メートルにしています。
 さらにイギリスのレディング大学の研究では、地球温暖化によって飛行機が飛行する高度1万メートル付近のジェット気流が速くなるとともに乱気流の発生件数も増え、機体の揺れが大きくなるため、乗客が負傷したり、激しい揺れで機体が損傷し、航空会社が支払う補修費用などが増加すると予測しています。
 これらの影響で搭乗人数を減らさざるを得ないうえ、余分な費用がかかり、さらに乱気流などへの保険費用も増えることにより、運賃が増えることになり、飛行機旅行は高価になります。

 地球温暖化の原因は空気中の二酸化炭素の増加が主要な原因ですが、その二酸化炭素が肥満人口を増やしているという説を発表した研究者がいます。
 22年間、地球の気温と体重の増加の関係を調査した結果ですが、反論もあって決定的とは言えません。
 仮に正しいとすると「日本のコンビニと自動販売機が肥満を解決する」という論法があります。
 肥満は体重(kg)÷身長(m2)(BMI)の値が25以上と定義され、身長1.7mであれば72kg以上が肥満になります。
 この計算によって世界の肥満率の順位が発表されていますが、日本は5%で156位です。
 上位はサモア(75%)、ナウル(71%)、トンガ(58%)など太平洋の島国ですが、先進諸国ではアメリカが33%で11位、イギリス、オーストラリア、スペインが27%で43、44、45位となっています。
 それらの国では朝食はハンバーガー、パンケーキ、チーズサンドイッチなどをコンビニで買い、糖分の多い炭酸飲料を自動販売機で買ってオフィスで食べるという人が多いのですが、日本のコンビニにはサンドイッチ以外にも、おにぎり、サラダ、煮魚、野菜の惣菜など種類が多く、自動販売機にも様々なお茶が揃っており、このような食事が肥満を防いでいるというわけです。

 このように原因から結果をたどっていくと、ほんのわずかなことが巨大な変化を引き起こすことが分かります。
 1914年にオーストリア・ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナンド大公夫妻がサラエヴォで暗殺されたことから、5年間に及ぶ第一次世界大戦が始まり、戦死者1600万人、戦傷者2000万人という、人類史上最大の犠牲者を出した戦争が始まりました。
 ブレーズ・パスカルの「クレオパトラの鼻が短かったら地球の歴史は変わっていただろう」という言葉や、気象学者エドワード・ローレンツがカオス理論を説明するために、「ブラジルの1匹の蝶の羽の羽ばたきが、アメリカのテキサスに竜巻を起こす」という説明をしました。
 まさに世界には多数の見えない連鎖があるということです。





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