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論文

 今日11月5日は「縁結びの日」に制定されています。
 語呂合わせで「いい(11)御縁(5)の日」という訳ですが、単なる語呂合わせというだけではなく、島根県にある「神話の国・縁結び観光協会」が制定したというと、多少は納得されるのではないかと思います。
 言うまでもありませんが、新暦の11月の一部は旧暦の10月に重なります。そして旧暦10月は「神無月(かみなづき)」と言われるように、全国の八百万の神が島根県の出雲大社に集まり、男女の縁結びの相談をするために、各地の神様が留守になるという訳です。
 もちろん、ご存知のように、出雲の国では旧暦10月は全国から神様が集まる「神在月(かみありつき)」と呼ばれています。
 ところで、最近は「婚活(こんかつ)」という言葉が流行しているように、結婚を目指して若者が努力していますので、今日は結婚事情についてご紹介したいと思います。

 第一の話題は、結婚できないのか、しないのかは分かりませんが、実際に戸籍上は未婚の若者の比率が急増しています。
 まず男性から調べてみますと、25歳から29歳までの20代後半の未婚率は、1950年には34%でしたが、それ以後10年毎に、46%、46%、55%、64%、69%と上がり続け、2005年には71%にもなっています。
 30代前半になったら観念するかというと、1950年の8%から2000年には43%、2005年には47%と、半分近くが未婚のままです。
 ちなみに50歳の未婚率は「生涯未婚率」と呼ばれますが、1950年の1・5%から2000年には13%、2005年には15%と10倍も増えています。
 女性についても傾向は同じで、20代後半では、1950年の15%から、やはり10年毎に、22%、18%、24%、40%、54%と上がり、2005年には59%と6割近くの女性が未婚です。
 30代前半では、1950年の6%から2000年には27%、2005年には32%ですし、50歳の生涯未婚率も1950年の1%から2000年には6%、2005年には7%と上昇しています。

 原因は明確には分かりませんが、一つは女性の労働力率が上がってきたことではないかと思います。
 25歳から29歳の20代後半についてみると、1975年には44%ですが、85年には55%、95年には68%、2005年には75%と上がっていますし、30代前半についても、同様に44%から、50%、55%、64%と上がっています。
 そうすると、かつては永久就職として結婚を考えた女性が、経済的に自立できるのであれば、慌てて結婚することはないと考える場合も増えてきて、その影響で男性も相手が見つからないということになるのではないかという訳です。
 ヨーロッパを見ると、2005年の20代後半の労働力率はフランスが78%、スウェーデンが81%、オランダが84%ですし、30代前半では、フランスが80%、スウェーデンが83%、オランダが80%と日本より高く、このような方向に日本が進むとすれば、さらに未婚率が上がる可能性があります。

 第二は都市に人口が集中し、未婚でいることが地域社会で噂になるような状況が減ってきたということも影響していると思います。
 これは離婚率にも現れています。1950年には人口あたり0・1%でしたが、2005年には0・2%にまで増えています。
 さらに結婚件数あたり離婚件数の比率では、1950年の0・1から0・4と4倍にも増えています。
 かつて離婚は女性にとっては出戻りという言葉で非難されるような雰囲気もありましたが、最近ではバツイチなどと気楽に表現される時代になり、未婚でいることが肩身の狭いことではなくなった時代背景を反映していると思います。

 第三は見合い結婚が減ってきたことも影響していると思います。
 厚生省「出産力調査」によると、1950年には見合い結婚が55%、恋愛結婚が35%程度でしたが、1965年に逆転し、最近では15%と85%で、圧倒的に恋愛結婚が増加しています。
 そして、アンケート調査でも、20代後半の男性の57%、女性の61%が恋愛結婚を希望しています。
 このような状況が「婚活」を必要とする社会の背景にあるのかも知れません。

 ところで、女性の労働力率が高くなったこと、未婚であることへの社会的蔑視が減ってきたこと、恋愛結婚が大半になったことを合わせると、ヨーロッパの社会に近付いてきたということになりますが、そうするとヨーロッパ諸国できわめて高い比率の婚外子、すなわち戸籍上は結婚していない男女の間に生まれる子供の比率も上がっていく可能性があります。
 日本でも1975年の0・8%から2005年には2・03%まで比率が上がってきましたが、それでもスウェーデンの55%、フランスの48%、デンマークの46%、イギリスの43%と比べると、桁違いに少ない状態です。
 日本がヨーロッパ諸国の水準に向かっていくとなると、実質的な結婚はともかく、戸籍上の結婚はさらに減っていく可能性は十分に予想できます。
 このように考えてみると、結婚という人生の重大な行事についての社会的な拘束条件が次々に緩和され、自由になってきたということになりますが、それに反比例するように、個人の努力である「婚活」が要求されるようになってきたということではないかと思います。





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