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論文

 今年も年末になり、帰省の時期が近付いてきました。
 多くの方が帰省の交通手段を検討されていると思いますが、高速道路の通行料金が上限1000円になる休日割引は、年内は実施されず、新年の1日から5日が対象になり、年末に一家が自動車で帰省する場合の恩恵が消滅しました。
 帰省が集中する年末の混雑緩和という理由のようですが、旅客の減少を心配している新幹線やフェリーへの配慮もあると思います。
 実際、JR各社は、これまで割引をしなかった年末年始に割引制度を初めて導入し、大幅な値下げを発表しています。
 しかし、九州や北海道となると、やはり飛行機ですし、年末年始に海外旅行という方々にとっては空港が必須の施設です。しかし現在、その日本の空港が様々な問題を抱えています。

 そこで今日は日本の空港問題について話をさせていただこうと思います。
 第一は国内問題で「地方空港」です。
 今年は、開港までに色々と問題が発生して話題になった「富士山静岡空港」が6月4日に開港し、さらに来年3月11日には茨城空港が開港予定で、99の空港が存在することになります。
 単純に割算すると、都道府県あたり2以上の空港が存在していることになり、国土面積あたりの空港の数はイギリス、ドイツに次いで世界3位です。しかし、便数や路線が少なく、それほどの恩恵でもありません。
 例えば、能登空港は東京と2往復、有明佐賀空港は東京4往復、大阪2往復が飛んでいるだけという状態です。
 これも利用する地域の人々にとっては恩恵ですが、問題は空港の経営が成り立たなくなっていることです。

 空港の建設のためには国の空港整備特別会計から相当の金額が支出されますが、完成した後、地方空港の大半は地方自治体が維持管理する必要があります。
 その収入の大半は航空会社が支払う着陸料ですが、日本航空の経営状態が象徴するように、航空会社は経営危機を回避するために、採算の取れない路線を減らしていますから、収入は減る一方で、地方空港はすべて赤字というほどの状態です。
 このようになる原因の一つが、空港を無理に作ろうと、国に申請する旅客予測の数字を過大に見積もっていることです。
 富士山静岡空港の場合、1995年の計画申請時点では年間利用者178万人でしたが、2000年には121万人、2005年には106万人に下方修正され、現在の実績では60万人から70万人にしかならないと予測されています。
 当初の3分の1程度ですから、ますます悪循環に陥ることになります。
 結局、その赤字は都道府県が穴埋めすることになりますから、地域住民に負担が降り懸ってくることになり、かつての箱もの行政と同じ結果になるということです。

 第二は国際問題で「ハブ空港」です。
 前原国土交通大臣が羽田空港を日本のハブ空港にすると発言して話題になりましたが、ハブというのは車軸という意味で、自転車の車輪のように、中心の車軸から多くのスポークが伸びている状態です。
 羽田空港がハブ空港になるという意味は、アメリカやヨーロッパなどからの飛行機が羽田空港に到着し、そこからアジアの各都市に飛んで行くということです。
 現在の日本の国際線のハブ空港は成田空港ですが、この地位が最近危うくなっているのです。
 これも前川大臣の「現状では韓国の仁川(いんちょん)空港が日本のハブ空港」という言葉が象徴していますが、2001年に開港した仁川空港が急速に発展して、成田空港を追い上げているのです。
 まず貨物取扱量の逆転です。2005年は成田空港が世界4位、仁川空港が世界5位でしたが、2007年には7位と5位と逆転しました。
 旅客数では、2002年には年間3200万人と2000万人という大差でしたが、2008年には成田空港が3346万人で世界31位、仁川空港が3016万人で世界39位と迫ってきました。

 なぜ仁川空港が急速に発展しているかというと、まず施設の差があります。
 仁川空港には4000m級の滑走路が3本ありますが、成田空港は4000m1本と2500m1本ですから、飛行機の発着できる回数が大きく違いますし、仁川空港は浅瀬を埋め立てて建設したため工事費が安く、その結果、着陸料が成田空港の3分の1程度という強みがあります。
 また、成田空港は騒音の関係で夜間の発着が出来ませんが、仁川空港は24時間使用可能です。
 実際、今年の7月の時点で、成田空港からは世界の93都市に旅客便が飛んでいますが、仁川空港からは170都市へ飛んでいるという大差になっていますし、仁川空港との間に旅客便が飛んでいる日本の地方空港は26にもなっています。

 スーパーコンピュータのように「2位では駄目なんですか?」ということですが、海外との交流が間接的になり、地位の低下になるから駄目だと思います。
 しかも、2位にさえ踏みとどまれない状況が迫っています。1999年に開港した4000m級の滑走路を3本もつ上海浦東(ぷーどん)国際空港、3800mの滑走路2本と3200mの滑走路1本をもつ北京首都国際空港なども存在し、さらに成田空港よりも大幅に旅客数の多い香港国際空港やシンガポールのチャンギ国際空港も入れると、成田空港のアジアでの地位は2位どころか6位くらいにまで下がりかねません。

 そこで、来年、4番目の滑走路が完成する羽田空港をハブ空港にするという前川大臣の発言になって行く訳です。
 しかし、滑走路が増加しても国際線に割当てられるのは年間6万回の発着程度ですから、国際ハブ空港の地位には及ばないということになります。
 こうなれば、成田空港、羽田空港、中部国際空港、関西国際空港の4空港をリニアエクスプレスで結んで一体にし、10本の滑走路をもつ空港にするというくらいの大胆な発想がないと、「やはり6位では駄目でした」ということになりかねないと思います。





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