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論文

 明日1月29日は「南極の日」です。念のため、12月14日も「南極の日」ですが、これはノルウェーの探検家ロアール・アムンセンと4名の隊員が1911年に人類で初めて南極点に到達した日で、1月29日は日本のローカルな「南極の日」です。
 日本が制定している理由は、すでに53年も前になりましたが、1957年に日本の南極観測隊が南極の東オングル島に上陸し、昭和基地を開設した日を記念したものです。
 この年の7月1日から翌年の12月31日までが「国際地球観測年」と命名され、世界の先進国が協力して、オーロラ、宇宙線。地磁気、電離層など12項目の観測をし、情報交換しようという趣旨の国際活動が行われ、日本も参加したというわけです。
 しかし、この参加には紆余曲折がありました。
 1957年を国際地球観測年にするという決定は1951年になされたのですが、日本が独立したのは翌年の4月28日ですから、この時点で日本は独立していませんでした。
 そのような背景もあり、第二次世界大戦で日本に遺恨のある国が日本の参加には反対していました。しかし、アメリカとソビエトが支援して、何とか参加が可能になり、そこで日本はがんばって12の項目すべてを観測することになったわけです。

 最初の観測隊が1956年11月8日に南極観測船「宗谷」で出発し、2ヶ月後の1月8日に南極に到着し、20日ほどかけて基地を開設したわけですが、独立後間もない日本としては偉業でした。
 最初は2回で中止する予定でしたが、その後、何年か中断したことはあるものの継続され、現在は第49次越冬隊が滞在しています。

 南極は昭和基地で最低マイナス45度、ソビエト連邦時代のボストーク基地ではマイナス89度という厳しい環境ですが、なぜ、そのような過酷な場所に行くかというと、第一は地球の仕組を探るためです。
 昭和基地は南緯69度という南極大陸の縁にあり、意外に知られていませんが、それ以外に日本は3カ所の基地を開設しています。

 1カ所目は「みずほ基地」で、1971年から1985年まで使用され、現在は使われず雪に埋もれています。
 2カ所目は「あすか基地」で、1985年から1992年まで使われ、現在は無人の気象観測基地になっています。
 この2カ所は大陸の縁にありますが、もう1カ所が「ドームふじ基地」で、昭和基地から1000kmも内陸に入った南緯77度で標高3810mの氷床の上にあり、1995年から使用されています。
 年間の平均気温がマイナス58度という厳しい環境ですが、そのような環境で行われている重要な仕事は、3000m以上の厚さのある氷床に真直ぐに穴を掘り、「アイスコア」という直径10cm弱の氷の柱を掘り出すことです。
 何のためかというと、氷の中に空気の小さな泡や遠方から飛んできた花粉や微生物が閉じ込められているので、それを研究して過去の気象条件をはじめとする地球の歴史を調べることです。
 そして南極といえども季節によって気温が変化しますから、その氷の柱は縞模様になっていますので、その縞を数えていけば何年前の氷かが分かり、特定の年代の地球環境が分かるというわけです。

 当然、深く掘れば掘るほど、古い時代の地球の状態が分かりますから、各国が深く掘る競争をしてきました。
 これまではロシアのボストーク基地で掘られたアイスコアが42万年前までの過去を明らかにし、EUのチームがドームC基地で掘り出したアイスコアが72万年前までの過去を明らかにしています。
 日本のドームふじ基地では2006年に3035mの長さのアイスコアを掘り出しました。当初は100万年前まえまで遡ると期待されていましたが、EUと同じ72万年前まで、現在分析の最中です。
 まさに地球の過去が記録されているというわけです。

 第二は科学目的に比べると生臭い話ですが、資源の確保です。
 南極の地図を見ると、地図によっては南極点から経線に沿って放射状に線が引かれ、国名が書いてあります。
 現状では、1908年に領有権を主張したイギリスから始まり、ニュージーランド、フランス、ノルウェー、オーストラリア、チリ、そして1942年に主張したアルゼンチンまで、7カ国が領有を主張しています。
 日本も1912年に白瀬のぶ陸軍中尉が探検したときに、到達した最南の地点に日章旗を立てて「大和雪原」と命名しましたが、サンフランシスコ平和条約で領有権を放棄させられ、現在、領有権はありません。
 しかし、科学的にも重要な意義のある南極大陸を特定の国の領土にするのは弊害が大きいということでで、南緯60度より南の南極を平和的に利用する目的の「南極条約」が1959年に締結され、46カ国が締約しています。

 さらに1991年に「南極条約議定書」が採択されて、南極での資源開発は禁止していますが、2048年に効力が消滅するので、それを見越して、2008年にはイギリスが原油や天然ガスの採掘権確保を目指して動き始め、今年の1月には中国が南極観測船「雪龍号」を南極に派遣し、調査をし始めています。
 温暖化だけではなく、政治的にも極寒の南極が熱くなり始めているということです。





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