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論文

 今日はエイプリルフールです。
 この起源は明確ではありませんが、有力な説は、1564年にフランスのヴァロワ朝の第12代国王シャルル9世が、それまで3月25日が新年の始まりであった暦を1月1日に切り換えたことが発端だと言われています。
 当時は新年の3月25日から4月1日までは春の祭典を祝っていたのですが、これが無くなってしまうので人々が反発し、4月1日は「ウソの新年」といって馬鹿騒ぎしていたところ、シャルル9世が憤慨して、騒いでいた人々を逮捕して処刑してしまったという事件が発生しました。
 そこでフランス国民は国王への抗議の意味を込めて、4月1日を「ウソの新年」として祝うようになったということです。
 それはともかく、今日の新聞やラジオなどでは様々なウソが報道され、ときには騙されることもあるという日になってしまいました。
 最近の例では、2005年4月1日に前年の12月に発生したスマトラ島沖の地震によって沖縄南端に新島が出現したという日本の新聞のウソを韓国の新聞がニュースとして報道したということがあります。

 自然界にも「擬態」といって木の葉にしか見えないチョウチョや、海底の砂に同化してしまうサカナなども存在しますが、やはり嘘をつくのは人間の特技だと思います。
 昨年の振り込め詐欺の被害総額は全国で96億円になり、前年の3分の1に減少したそうですが、人間界には石川五右衛門の辞世の歌「石川の砂の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」が象徴するようにウソや詐欺は尽きません。

 そこで今日はエイプリルフール記念特集として、世界の壮大なウソや詐欺について御紹介しようと思います。
 セールス担当者を叱咤激励するときに「エスキモーに氷を売れ」という話が作られています。このように売れそうにもないものを売るという詐欺は歴史上無数にあります。
 1920年代にアメリカのフロリダ州は北部から移住してくる人々が200万人以上も殺到して土地ブームになりました。
 そこに目をつけてニューヨークから到来したのが天性の詐欺師として有名なウィルソン・ミズナーで、怪しげな土地を造成して販売していましたが、ついに土地が無くなってしまったので、引き潮のときには姿を現す海底を売出すことになりました。
 契約した客が現地を見に来た時、そこにあったのは海だったという訳です。

 しかし、これなどは可愛い方で、ロンドンのトラファルガー広場にあるネルソン記念碑、国会議事堂、バッキンガム宮殿、さらにアメリカで首都ワシントンにあるホワイトハウス、ニューヨーク港にある自由の女神を売った強者がいます。
 スコットランド人のアーサー・ファーガソンという人物は、1920年代前半にトラファルガー広場を歩いていたとき、ネルソン記念碑を眺めている人の良さそうなアイオワ州から来たアメリカ人に出会い、一瞬にしてひらめき「あの塔の上にあるのはイギリスの英雄ネルソン提督ですが、屈辱的なことに、イギリス政府が負債を返却するために売り払うことになったのです」と悲しそうに説明したそうです。
 そのアメリカ人が値段を尋ねたのが運の尽きで、ファーガソンは「6000ポンドですが、この辛い仕事を秘密で任せられているのが私なのです」と溜め息をついたところで勝負はつき、アメリカ人は小切手を彼に渡して領収書を受け取り、指定された運送会社に行ったところ一笑に付されたという話です。

 その後、国会議事堂、バッキンガム宮殿もアメリカ人に売りつけることに成功したファーガソンは、カモが飛んでくる源に行った方が良いと、当然ながら考え、1925年にアメリカに行きます。
 そこで手始めにホワイトハウスを年間10万ドルという安値で99年間貸すことに成功し、次に仕掛けたのが自由の女神の売却です。
 「ニューヨーク港の拡張に自由の女神像が邪魔になるので、連邦政府はそれを除去する費用を負担してくれる方に喜んで売却します」と可哀想なオーストラリア人を騙し、10万ドルの供託金をせしめています。
 失敗したのは自由の女神の前でオーストラリア人と記念写真を撮影したことで、その写真によって足がつき、5年間の禁固刑になりますが、釈放されて以後も詐欺で稼ぎ続けたという天性の詐欺師でした。

 もう少し高踏趣味の詐欺を最後に御紹介します。1910年2月に、イギリスのドーセットシャーのウェイマス湾を航海していたイギリス最強の戦艦ドレッドノート号は、船上にアビシニア皇族一行を迎えて賑やかでした。
 一行は最新兵器を見ては、両手を上げて「ブンカブンカ」という怪しげなアビシニア語を叫んでいたそうです。
 一行は上陸し、外務省からという偽命令で手配された特別列車に乗ってロンドンに向かったのですが、最後の悪戯として、アビシニアの習慣では、皇室に食事を供する給仕は灰色の子羊皮の手袋をはめていなければいけないと説明したので、列車が途中の駅に停車したときに、あわてて手袋を買いにいったというエピソードも伝わっています。
 これが有名な話として伝わっているのは、このアビシニア皇族に扮したのが、当時の有名なクリケット選手のアンソニー・パクストン、小説家のヴァージニア・ウルフなどだったからです。

 ウソには罪のない悪戯もありますが、振り込め詐欺のような実害のともなうウソもあります。残念ながらウソをつくのは人間の本性のようなので、4月1日を契機に注意していただければと思います。





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