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論文

 タケノコが旬の季節なので、タケに関係する話をご紹介したいと思います。
 タケと言えば、まずタケノコですが、国内のタケノコの消費は1995年頃を頂点に減りつつあります。
 1995年には年間約33万トンの消費量でしたが、2008年には約25万トンと4分の1も減ってしまいました。
 食材が多様になっていますから、これは仕方がないとして、もうひとつの問題は、国内の生産量が急速に減って、輸入が増えていることです。
 タケノコの国内生産量は1985年頃が頂点で15万トンでしたが、2008年には2万トン程度に減り、逆に輸入量は8万トンから22万トンに増えています。
 その多くは中国などから、水煮に加工したものが入ってくるのですが、理由は想像できるように安いということです。
 これも仕方のないこととしても、国内のタケノコの生産量が減ったことで、新しい問題が発生しているのです。

 タケノコは言葉の通り、竹の地下茎から新しく出てきた芽ですが、その芽の段階で収穫しないと、急速に成長して竹になります。
 日本では主として孟宗竹を利用していますが、この孟宗竹の成長力はすさましいもので、地面に頭を出した芽が2ヶ月もすると高さ20mほどの青竹になってしまい、1日に1・2m伸びたという例もあるそうです。
 20年間で10mくらいしか成長しないスギやヒノキと比べると、その異常な成長速度が分かると思います。
 また地下茎の成長力もすごいもので、1年で6mも伸びていきますが、地下にコンクリート製の壁があっても、それを破って伸びていくほどの破壊力がありますし、タケの地下茎は樹木の根に比べて浅いので、竹林が広がると土砂崩れの原因にもなり危険です。
 そこで、国産のタケノコの消費が減ると竹林が増えていく結果になります。
 実際、林野庁の調査によると、全国では1971年の14万8000ヘクタールから、36年後の2007年には15万9000ヘクタールと1万ヘクタール以上増加しています。山手線内の面積のほぼ2倍です。
 これは、かつてタケノコが経済的に有利な作物であった時代に竹林を人工的に増やしたことも影響していますが、最近ではタケノコを収穫せずに竹林が放置されていることも影響しています。

 そこで自治体によっては竹林対策検討委員会を設置して対策を検討していますが、当面できることは伐採して焼却する程度です。
 しかし、青竹は水分含有率が35%から45%もありますから、焼却するのもそれほど簡単ではありませんし、焼却場まで運ぶ手間も相当なものです。
 そこで地上最強の天敵である人間が竹を有効利用しようという発想が登場しました。
 かつてのように洗濯物を干す竿竹の需要はほとんど無くなりましたので、第一は我々が国産のタケノコを食べるということですが、それ以外にも対策が登場しています。

 来月の6月5日土曜日に長野県の飯田市で「竹宵まつり・100万人のキャンドルナイトin南信州」というお祭りが開かれます。
 昨年、第1回が開かれたときに見物に行ったのですが、飯田市内に放置されている竹薮から、約5000本のタケを切り出して竹筒を作り、それを町の中心部に並べます。
 夜8時に市内の照明を一斉に消し、10時までの2時間、その竹筒のなかにロウソクを灯して環境問題を考えようというお祭りです。
 昨年は雨が降って残念でしたが、それでも5000人が参加し、屋台も出店して賑やかでした。
 真っ暗な町の中心街に様々なデザインを工夫した竹筒の照明器具が光るのは風情があり、ぜひ出かけられたらと思います。

 しかし、この程度では大した消費にはならないということで、本格的な産業利用を可能にする技術が開発されました。
 香川県にある東亜機工という会社が、2008年にタケを竹綿(たけわた)というフワフワの繊維に転換する装置を開発しました。
 簡単に紹介すると、装置の一方からタケを送り込むと、反対側からフワフワの綿のような繊維が出てくるという機械です。
 これまでも類似の装置は存在していましたが、1日500キログラムほどの生産能力で、製品価格もキロ1000円近くしていました。
 しかし、東亜機工の装置は1日に5トンと10倍の処理能力があり、しかも製品価格も150円程度に安くなりました。
 タケの重さの半分は水分ですから、5トンの竹綿のためには、ほぼ10トンのタケが必要です。
 熱帯地方のタケは1本で200キログラムもありますが、日本国内で生育している孟宗竹は1本10から15キログラムですから、10キログラムで計算すれば、1日に1000本のタケが処理できることになります。
 日本の竹林の密度はヘクタールあたり3000本から5000本ほどですから、1台の装置で3日から5日で1ヘクタールの竹林が処理できる計算になります。

 問題は利用方法ですが、タケは消臭効果、抗菌効果、静電気防止効果など優れた性能を持っていますので、紙に加工して紙おむつやナプキンの材料にすると消臭や抗菌の効果が発揮されます。
 また、プラスチックで固めて自動車や住宅の内装材にするとシックハウス対策にもなりますし、廃棄するときにも有害物質が少なくなるなどの効果もあります。
 本格的な利用はこれからですが、放置されて環境を壊しかねないタケが役に立つ資源になれば一石二鳥です。





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