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今年は国際連合の機関であるユネスコが制定した「国際周期表年」です。 縦方向に7行、横方向に18列の升目に水素の元素記号「H」とか炭素の元素記号「C」というローマ字が入った周期表と言われる表を中学校や高等学校の理科の時間に勉強し、頭が痛かった記憶がある方も多いと思います。 今年はこの周期表が発明されて150年目ということで、「国際周期表年」が制定され、各国で行事が行われています。 例えば、日本の文部科学省は今年2月に「一家に一枚 元素周期表」という掛け声で、無味乾燥なローマ字の元素記号を入れた表ではなく、例えばタングステンは白熱電球のフィラメントに使われているので升目に電球の写真を入れ、オスミウムはイリジウムと合金にして万年筆のペン先に使われているので、その写真を入れたような周期表をホームページからダウンロードできるようにしています。 国際行事としては、2月8日にロシアで国際周期表年の開会式が開かれ、7月には国際純正応用化学連合の周期表国際会議がロシアのサンクトペテルブルグで開かれます。 何故ロシアか、何故2月8日かというと、150年前の1869年にロシアの化学者ドミトリ・メンデレーエフが周期表を発表したのですが、彼の誕生日が2月8日で、亡くなった場所がサンクトペテルブルグだからというわけです。 18世紀後半から19世紀前半は化学が一気に発展し、多くの元素が発見されたのですが、それらの元素には何らかの法則性があるのではないかと考える多くの学者が、その法則性を発見する努力をしていました。 それらの中で多くの人々が納得する法則を一覧表の形に整理したのがメンデレーエフであったというわけです。 一般の方々には、あまり近付きたくない周期表ですが、日本で話題になったことがありました。 2016年11月に周期表の7行13列の位置に113番目の元素としてニホニウム(Nh)という名前が入った時です。 93番目以後の元素は自然には存在しない人工的に製造された元素ですが、ニホニウムは理化学研究所が1990年代から新しい元素を作る研究をしてきた成果が実現したものです。 この周期表の升目には一つずつローマ字の元素記号が入っていますが、3列目の6行目と7行目だけは元素記号ではなく、参照記号が記入され、欄外にそれぞれ15個の元素記号が表示されています。 とりわけ3列目と6行目の交点にある原子番号57番のランタンから71番のルテチウムの15個の元素はランタノイドとまとめて呼ばれ、非常に似た性質で、かつての技術では分離して抽出することが困難でした。 この15の元素と原子番号21番のスカンジウム、39番のイットリウムを加えた17の元素は英語でレアアース、日本語で希土類、珍しい土と呼ばれていますが、最近、政治的に注目されるようになっています。 昨年からトランプ政権は米中貿易戦争を展開していますが、強硬に突進した場合、中国が報復として輸出を禁止したり値段を引き上げたりするとアメリカが窮地になると危惧している物質があります。 それがレアアースなのです。レアアースは別名「産業のビタミン」と言われています。人間が摂取するビタミンは食事の分量からすれば微々たる量ですが、それが欠乏すれば病気になるように、レアアースも少量であるけれども工業製品の製造にはなくてはならない物質だからです。 例えば、LED電球はイットリウムとセリウムというレアアース、電気自動車のモーターの磁石にはネオジムやジスプロシウムというレアアース、バッテリーにはランタンというレアアースが少量ではあるけれども必須の材料です。 ところが、このレアアースの世界の埋蔵量は中国に46%、ブラジルに23%、ロシアに23%、インドに19%という具合で、アメリカは4%でしかありません。 そして現在の生産量は中国が80%、オーストラリアが13%、ロシアが3%、ブラジルが2%で、アメリカといえども大半は中国から輸入しているのです。 もし米中貿易戦争の報復措置として、中国がレアアースの輸出を大幅に減らしたり、値段を釣り上げたりすれば、アメリカの先端産業が行き詰まってしまうことになります。 実は日本は以前、その経験をしています。 2010年に尖閣諸島で違法操業の中国の漁船が海上保安庁の巡視船に故意に衝突したため、船長を逮捕した事件がありました。 その影響もあり、2012年には日本が尖閣諸島を国有化しました。 その前後から、日本が中国から輸入していたレアアースが一気に値上がりし、グラムあたり60円程度のテルビウムが450円と約8倍、25円のジスプロシウムが300円と12倍、6円のネオジムが40円と7倍になり、日本の産業界が悲鳴をあげたことがありました。 アメリカも同様の事態になることを警戒し、レアアースの使用量を減らしたり、代替品を開発するなど対中依存を減らす対策を取り始めています。 日本はさらに長期的な対策を開始しています。 東京大学の加藤泰浩教授などのチームが日本の最も東側にある南鳥島の周辺の排他的経済水域の海底の泥を調査したところ、中国のレアアース鉱山の20倍の含有率のレアアースが含まれていることがわかり、しかも量的には世界の陸上のレアアースの埋蔵量の1000倍にもなると推定されています。 さらに陸上の鉱石から抽出するよりも簡単な方法で抽出できるという利点もあります。 日本は長年、鉱物資源の少ない国土で苦労をしてきましたが、陸地面積の12倍もある排他的経済水域を利用できる技術開発の努力をすれば、資源大国になれる可能性が出てきたことになります。 |
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