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論文

 今日7月1日は非常に多くの記念日に指定されています。
 主な記念日を挙げてみると
 「国民安全の日」(1960制定):今日が産業災害や交通事故を防ぐ全国安全週間の初日ということで制定された日
 「童謡の日」(1984制定):日本最初の児童文芸誌『赤い鳥』が1918(大正7)年に創刊された日。これは政府の主導する唱歌や童話に反発した作家の鈴木三重吉が創刊し、創刊号には芥川龍之介、有島武郎、泉鏡花、北原白秋、高浜虚子など有名作家が賛同の意見を書いています。
 「建築士の日」(1987制定):1950年の今日、建築士法が公布されたことを記念。この法律は田中角栄代議士が中心となって議員立法で制定したものですが、当時は難関の国家試験を受験しなくても、建設大臣が認定すれば一級建築士になることができ、その特例によって田中角栄代議士が第1号の一級建築士になっています。
 「郵便番号記念日」:1968年に郵便番号制度が実施されました。この制度が早目に実施されていれば、1962年に「住居表示に関する法律」が施行され、郵便配達の便宜のために全国の多くの由緒ある町の名前が消えるという事態が防げたかも知れません。
 「東海道本線全通記念日」:1889(明治23)年に新橋から神戸まで東海道本線が全通した日で、当時の直通列車の所要時間は20時間5分でした。現在では東京から新神戸まで2時間50分程度ですから、7分の1に短縮されたことになります。
 それ以外にも「山形新幹線開業記念日」「名神高速道路全通記念日」など交通関係の記念日がいくつか制定されています。
 変わったところでは「ウォークマンの日」で1979年の今日、第1号が発売され、価格は3万3000円でした。
 この辺りで終わりますが、30近い記念日が7月1日に集中しているのは、一年の丁度半分が経過したときということだからではないかと思います。

 そして必ずしも今日とは決まっていませんが、全国の海岸や山で「海開き」「山開き」が行われるのも7月1日に集中しています。
 海水浴や登山を開始する日ですが、「山開き」には登山を開始するというだけではない深い意味があります。
 現在の私たちは山の麓から頂上までを一続きとして自由に登山しますが、かつて山は「里山」と「奥山」に分けられ、里山は一年中、人間が利用するが、奥山は神の領域で信仰の対象であり、普段は入山が禁止されていました。
 そして夏の一定期間に限って信仰の行事として登山が許されたという経緯があります。
 その信仰は修験道とか山岳信仰といわれ、全国に多数の霊場があります。
 どれも信仰される方には重要な霊場ですが、一般に「三大」と名付けられた場所があります。
 三大修験道は福岡と大分にまたがる「英彦山(ひこさん)」、山形の庄内地方の「出羽三山」、吉野熊野の「大峰山」。
 三大山岳信仰は富山の「立山」、石川、福井、岐阜にまたがる「白山」、山梨と静岡にまたがる「富士山」。
 三大霊山は青森の「恐山」、滋賀の「比叡山」、和歌山の「高野山」です。

 私も出羽三山で何年か山伏となる修行の真似事をしているのですが、どのようなことをするかというと、早朝に谷川で身体を清め、「床固め」という座禅をする以外に、「山駈けの行」といって早足で月山に登って下り、次に「滝打の行」といって滝に打たれるなどの修行をしますが、特徴があるのは「南蛮いぶしの行」といって、密閉した部屋で米ヌカとドクダミとトウガラシを混ぜたものを火鉢で燃やし、自分の手先も見えないほどの白い煙の中で呼吸をすることです。
 なぜこのようなことをするかというと、自然の貴重さを知り、その自然から英気をもらうということのようです。
 とくに「南蛮いぶしの行」は、いじめにしか思えないのですが、それによって清浄な空気のありがたさを知るためだというわけです。

 このような人が特別の場合しか立ち入らない神聖な奥山という考え方があったので、日本の森は人々が里山を利用してきても荒廃することなく維持されてきたのですが、最近、新たに里山に追加して、里川、里海という考え方が登場してきました。
 平野で生活している場合、奥山や里山が維持されているから、そこを流れる里川に清浄な水が流れ、そのおかげで集落の前の海も豊かに維持されているという考え方です。
 そこで金沢大学は「能登半島里山里海自然学校」という体験学習の場を作り、京都大学は「海域陸域統合管理学研究部門」という組織を作るなど、分断された自然ではなく、自然を相互に密接に関係する対象としてとらえる研究を始めています。
 「山開き」「海開き」の日を、ただ山に登る、海で泳ぐというだけの日ではなく、自然を見直す日にすることも意味があると思います。





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