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論文

 久しぶりに今日は何の日ですが、今日は「廃藩置県の日」です。
 明治4(1871)年7月14日(新暦では8月29日)に江戸時代から続く「藩」を廃止して「県」にする制度が成立したことを記念する日です。
 慶応4年8月27日、新暦では1868年10月12日に京都で明治天皇が即位され、10月23日に年号が明治に改元され、明治時代が始まりました。
 しかし、社会の体制は江戸時代の300近い藩が残った地方分権のままですから、これを中央集権体制に変更する必要がありました。
 しかし、その年の1月には京都郊外で鳥羽伏見の戦いが起こり、4月以後には東北各地で戊辰戦争といわれる内乱が発生し、9月に終結したものの、10月26日には榎本武揚たちが函館五稜郭に籠って蝦夷共和国を宣言するなど、新政府への反抗は続いていました。
 そこで翌年の明治2(1869)年6月17日(新暦)に、各大名から天皇へ領地(版図)と領民(戸籍)を返還する版籍奉還の詔が発せられて、中央集権を推進しようとしますが、簡単ではありませんでした。

 そこで明治維新の中心勢力であった薩摩の西郷隆盛、大久保利道、大山巌や長州の木戸孝允、井上馨、山形有朋たちが7月初旬に密議をし、7月14日の午後2時に、突然、明治天皇が東京に残っていた旧藩主56人を皇居に招集し、廃藩置県、すなわち、これまでの藩を廃止し、新しく県を置き、現在の知事に相当する「知藩事」であった旧藩主を失職させ、明治政府から派遣される「県令」が県の長となるという中央集権にする改革を断行しました。

 これは旧藩主たちに事前に相談されることなく、突然実行された薩長連合による一種のクーデターでした。
 最初は藩をそのまま県に置き換えたので、3府(東京、京都、大坂)302県1使(北海道開拓使)と多数でしたが、以後、何度かの変遷があり、1889年にほぼ現在の制度に落ち着きました。

 そのような背景のある「廃藩置県の日」ですが、今年は丁度140年目にも当ります。
 したがって、都道府県制度による中央集権の制度疲労も次第に現れており、それが噴き出したのが一昨日の12日に秋田市で開かれた全国知事会議だと思います。
 まず前日の今週月曜日に、地震、津波、そして放射線被害を受けている福島、宮城、岩手の3知事が集まったシンポジウムが開かれましたが、国政への批判が遠慮なく飛び出しました。
 福島県の佐藤知事は「国会の議論は原子力発電所の事故の犯人探しばかりで、どう収束されるかの議論がなくて残念」、宮城県の村井知事は「国に早目早目に大きな方針を示して欲しいが、それがない」、岩手県の達増知事は「国に複数の省庁をまとめる調整力、指導力が欠けていた」と発言しています。
 達増知事は被災地へガソリン配給が遅れたことを例に出されたのですが、震災直後、自分の選挙区にだけ逸早くガソリンを配給することを強要した現職大臣が居たという噂もありますから、何をか言わんやです。

 そして一昨日の全国知事会議での主要な発言を列挙してみると、広島県の湯崎知事は「菅首相の動きを見ていると、国民的な議論がなく、政局のために脱原発を打ち出すのではないかと危惧する」、長崎県の中村知事は「目の前にある玄海原発について国に説明の場を求めているが動きがない」、石川県の谷本知事は「政府で誰が責任を持って原子力発電所を取り扱っているかわからない」など国への批判が相次いでいます。
 これは、たまたま現在の首相や、辞任した前復興対策担当大臣の個人の資質による面も無いわけではありませんが、これまでの制度の限界が顕著になり、国と地方の関係が大きく変わってきたことが影響していると思います。
 この制度を改革すべきだという議論は最近に始まったことではなく、1970年代に神奈川県の長洲知事を中心として「地方の時代」という言葉が流行し、80年代には大分県の平松知事や熊本県の細川知事が「地方反乱の時代」を唱え、90年代には改革派知事といわれる何人かの知事が「地域から変わる日本」というグループで活動し、その一人である岐阜県の梶原知事は2003年に全国知事会会長に選挙で選ばれ、「闘う知事会」を標語にして、これから地方主権を取り戻すために、中央政府と100年戦争を行うと宣言しておられました。

 その流れの中で、2009年の民主党のマニフェストでは5本柱の1本が「地域主権」となるなど、社会は中央集権から地方分権へ動いています。
 そこで課題となるのが、都道府県制度に変わって、どのような制度にするかということです。
 これまで議論されているのは「道州制」ですが、これは行政の多層性、すなわち、市町村、都道府県、国という三層性をさらに複雑にするだけなので、江戸時代の藩に相当する基礎自治体と国という二層性にするのが良いと考えています。

 今回の震災以後の復興活動を見ると、知事も奮闘していますが、もっとも活躍しているのは市町村という基礎自治体の首長です。
 そこで基礎自治体をどのように設定するかですが、「生命圏域(バイオリージョン)」を検討したらどうかと思います。
 これは自然条件や文化条件が似ている地域を一体にするという考えで、例えば、川の源流から河口まで、盆地の内部、湾の周辺などは自然環境も似ていますし、古くから交流もあるので、お祭りや食事などの文化も似ていますから、一体となったときに違和感がありません。
 これまでは統治や徴税の都合で行政圏域を定めてきましたが、環境問題が社会の最重要の課題となる時代には、自然環境、文化環境が一体の生命圏域が基礎自治体を形成するのが適しているのではないかと思います。





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