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論文

 今日9月1日は「キウイの日」です、といってもニュージーランド政府が決めたものではなく、ニュージーランドのキウイフルーツを輸入している日本の会社が決めた日です。
 なぜ9月1日かという理由も他愛のないもので、9と1で「クーイ」「キウイ」というわけです。
 キウイというと、日本では果物を思い出す方が多いと想いますが、これはニュージーランドに生育していた植物ではなく、中国原産の植物が20世紀初頭にニュージーランドに移植されたものです。
 日本では「シナサルナシ」とか「オニマタタビ」と呼ばれますが、ニュージーランドに移植されたときに、その果実の形がニュージーランドの国鳥キウイに似ているので、キウイフルーツと呼ばれるようになったというわけです。

 このキウイという鳥は飛べない鳥、もしくは飛ばない鳥として有名ですが、ニュージーランドには、キウイ以外にも、タカヘ、カカポ、ウエカなど、飛ばない鳥が何種類も居ます。
 何故かという説明のためには、1億年前にさかのぼる必要があります。
 1億年前、ニュージーランドはオーストラリア大陸の東端の一部でしたが、1億年前から8000万年前に、オーストラリアプレートの移動によって割目ができ、現在のニュージーランドに相当する部分がプレートの移動に押されて、大陸の端から2000km近く離れた現在の位置に移って来ました。

 この8000万年ほど前という時間には重要な意味があります。
 これはオーストラリア大陸に哺乳類が発生する直前でしたので、その直後に発生した哺乳類は飛ぶことのできる2種類のコウモリを除いて、沖合のニュージーランド島には到達できませんでした。
 その後、飛ぶことのできる鳥がオーストラリアなどから渡ってくるようになり、キウイも4000万年くらい前に飛んできたのですが、捕食者、すなわち鳥を襲って食べる動物が居なかったので、次第に飛ぶ能力を無くし、翼も尾羽根もない現在の形になりました。
 それがキウイなど飛ばない鳥が存在する理由ですが、エネルギーを消費して飛ばなくても、地面を歩いて虫などを食べていれば良いので極楽でした。

 ところが、4000万年後に大問題が発生しました。
 今から1000年程前に、無人のニュージーランドに、現在ではニュージーランドの先住民族と言われているマオリ族がポリネシアからカヌーで渡ってきたのです。
 島に住みついた彼らはモアという背丈が4m近くある飛べない鳥を獲物にして、数百年で絶滅させました。
 さらに200年近く前にイギリスからの移民が到来するようになると悲劇は拡大しました。
 彼らが連れてきたイヌ、ネコ、キツネ、オコジョなどが野放しにされ、飛ばない鳥を含め、88種類のニュージーランド固有の鳥のうち36種類が短期間で絶滅してしまいました。
 現在、ニュージーランド政府はキウイなど、わずかに生残った鳥を無人島に放して何とか繁殖するように保護しているという状況です。

 これを過剰適合の悲劇というのですが、ある環境にあまりにも適合してしまうと、環境が変化したときには絶滅の危機に直面するということです。
 キウイの日に因んで、このような現状をご紹介したのは、日本という国が同じような状況にあるのではないかということを指摘したいからです。
 2日前に野田総理大臣が誕生しましたが、1970年から数えると25人目になり、平均在位期間は1年7ヶ月です。
 日本では、官僚や財界がしっかりしていて、政治がいい加減でも国家が運営できるとか、イギリスやフランスのように国民が暴動を起こさないなど、日本固有の環境のお蔭で、このような年替わり内閣でも国家が維持できるのかも知れませんが、世界の先進諸国と比べると異常であることが分かります。

 同じ1970年から40年間、アメリカの大統領は8人で平均在位期間は5年、ドイツの首相とフランスの大統領は5人で8年、カナダの首相は9人で4年半という具合ですから、日本の異常さが分かります。
 それ以外にも日本が他国と大きく違うのは、男女格差です。
 国会議員の女性の比率は12%で世界の83位、管理職の女性の比率は9%で100位、技術職の女性比率は46%で世界74位という状態です。
 これらの数値を合わせて国連開発計画(UNDP)が毎年、男女共同参画指標、簡単に言えば男女平等の程度を比較して発表していますが、日本は57位です。

 この外国と比較すると異常な状態が、何をもたらすかというと、一例として今年5月にフランスで主要国首脳会議G8が開かれましたが、日本以外の7カ国の首脳は何回も出会っているのに、菅総理だけが初顔ですから、意思疎通が十分にできないことになり、外交交渉などで不利になります。
 女性の地位が低いということは伝統や文化の問題として否定する必要はないかも知れませんが、企業の業績は男女格差の少ない企業の方が良好であるという統計もあり、経済界にとっても不利かもしれません。
 キウイの運命を思い浮べながら、日本の特殊な状況による日本の将来を考えてみるべきだと思います。





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