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論文

 今週は先週の「Z世代」に続いて、さらに新しい「C世代」を紹介します。
 先週はアメリカを中心に世代ごとに名前が付けられ、現在の年齢で紹介すると、45歳から60歳くらいまでの「X世代」、25歳から45歳くらいまでの「Y世代」、10歳から25歳くらいまでの「Z世代」に分類されていることを紹介しました。
 世界の特徴に影響しているのは新しく利用できるようになった情報手段で、X世代はテレビジョンと電話、Y世代はパーソナルコンピュータとインターネット、Z世代はスマートフォンとWiFiのような何処でも何時でも利用できる通信回線ということです。
 簡単に言えば、時間と空間に制約されない方向に情報世界が拡大してきたことになります。

 X、Y、Zと進んできて先はどうなるのかと心配されていたかと思いますが、新たに登場してきたのがC世代です。
 今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。はC、D、Fと当分は頭文字に困らないことになったのですが、これはイギリスの新聞「フィナンシャル・タイムズ」のアメリカ版の編集長ジリアン・テットが提唱している世代概念です。
 C世代は2010年代に別の意味で登場したことがあります。
 この時の「C」は(パーソナル)コンピュータ、常時接続のコネクテッドなどZ世代の特徴に近い概念ですが、今回、提案されている「C」はカスタマイズ、自分好みに編集する世代という意味です。
 かつて音楽を聴くというと、限られた小遣いでレコードやCDを買う、映画を見るというと、これも小遣いを節約してビデオテープやDVDを買う、文字情報を読む場合は、自分の資金の範囲で新聞や雑誌を買うというように、限られた情報源から選ぶというスタイルでした。
 しかし現在、アップルミュージックであれば月額1000円程度の料金で5000万曲の音楽、キンドルも月額1000円程度の料金で120万冊の書籍、Huluであれば、やはり月額1000円程度で5万本の動画から選り取り見取りという世界に変わっています。
 そこで新しい世代は膨大な情報源から自分の趣味や思想に合わせて自由に選択、すなわち編集する=カスタマイズすることが可能な社会に生活し始めています。

 モノの消費も同様で、サブスクリプション=定額購入という流通方式が登場しています。
 生活費を節約して購入したわずかな洋服を何回も着るという生活様式ではなく「メチャカリ」であれば毎月7000円程度で数万着の新品の洋服の中から自由に選んで借りて、返却すれば、何度でも新しく借りられるという生活が可能です。
 自動車も新車を買ってローンを払いながら何年も同じ自動車に乗るのではなく「ノレル」というサービスでは月額4万円から8万円で多種類の中から選んだ自動車に乗ることができます。

 ここまでであれば新しい消費生活が登場したということですが、C世代を提唱しているジリアン・テットが分析しているのは、世界の政治がカスタマイズ、自分の好みを選ぶ方向に動いているということです。
 独裁国家を別にすれば、多くの国で正統と保守と革新の二大政党が対立するという構図でした。
 ところが日本では現在、国会に議席を持つ政党だけで10党あり、保守と革新に明確に分けることができない状態です。
 フランスも極右のル・ペン党首が率いる「国民連合」から、マクロン大統領が率いる中道の「共和国前進」、極左の「労働者の闘争」まで11の政党が存在しています。
 ドイツでは連邦議会に議席を持つ政党だけでも、昨年までメルケル首相が党首であった「ドイツキリスト教民主同盟」をはじめ7政党、それ以外にも4政党があります。
 イタリアでは下院か上院に議席を持つ政党が18もあります。
 人口1000万人のスウェーデンでも国会議員を擁する政党だけで8政党が存在しています。
 アメリカは一般に歴史のある共和党と民主党の二大政党で構成されていると理解されていますが、党員10万人に以上の政党は他に2政党あり、さらに連邦制ですから週単位で活躍する政党は50近く存在します。
 その二大政党の一つ民主党の次期大統領選挙に立候補しようとしている候補者が現状では26人もいるということもC世代を象徴しています。

 この現状を一言で表現すると多種多様ということになりますが、これこそが情報社会の特徴を象徴しています。
 第一に情報は違う内容に価値があり、同じ内容には価値がないという特徴を持っていますから、社会は多様になることが必然の結果です。
 トランプ大統領は共和党所属の大統領ですが、その政策は伝統的な共和党の方針と同じではなく、よく言えば課題ごとに最適の政策を詠唱し、悪く言えば思いつきであるという意味でもカスタマイズです。
 その内容を社会に伝達するツイッターというSNSを駆使しているという意味でもC世代を象徴する政治家と言えなくもありません。
 第二は、かつては少数の意見を多数の人に伝えるのに適切な手段がないか、あったとしても費用がかかって誰でも多数の人々に意見を伝えることができませんでしたが、現在ではSNSでほとんど費用がかかりませんし、選挙資金もマイクロファンディングで簡単に集めることができます。
 このような巨大な転換が進行している中で、未だにマスメディアと呼ばれている放送や新聞がもっともC世代から離れているのかもしれません。





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