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論文

 現在、尖閣諸島問題、竹島問題が騒然としていますし、北方四島問題もあり、日本は領土問題で揺れています。
 しかし、領土問題は最近に始まったことではなく、古代から存在し、例えば紀元前264年に始まり、紀元前146年のカルタゴの滅亡で終了したポエニ戦争の発端はシチリア島の領有問題でした。
 しかし、一気に増加したのは16世紀頃からで、世界の列強といわれた国々が南北アメリカ大陸、アフリカ大陸などを植民地にする帝国主義を推進した時代ですし、それらの植民地が第二次世界大戦後に次々と独立し始めたときにも領土問題が頻発しました。
 それから半世紀以上が経過していますが、解決されていない領土問題は多数残っており、世界各地で紛争が続いています。
 そこで今日は、日本が直面している領土問題の参考になればと、比較的最近の興味深い領土問題を御紹介したいと思います。
 第一は世界の7カ国が争っているという、もっとも多くの国が関係している領土、南極大陸の問題です。
 南極大陸が発見されたのは1820年頃ですが、1908年にイギリスが調査船を派遣して領有を主張しました。
 それ以後、アルゼンチン、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、フランス、ノルウェーの合計7カ国が、自国の海域の端を南極点と結んで、扇形の範囲を領土と主張しています。
 実は日本も1912年に白瀬中尉が南極探検をし、南緯80度5分まで到達したときに、一帯を「大和雪原」と名付けて日章旗を掲げ領有を宣言しましたが、第二次世界単線後のサンフランシスコ条約で放棄させられ無効となってしまいました。
 しかし、1957年から58年に国債地球観測年に、日本、アメリカ、ソビエトなどが調査研究をし、59年に12カ国で南極条約を締結し、南極の軍事利用の禁止、調査活動の自由を確立するとともに、領有は凍結ということで一旦決着しました。
 しかし、領有が否定された訳ではなく、今後、資源などで南極が注目されると、また領有問題が復活する可能性があります。

 第二は、ヒマラヤ山脈を巡る国境争いです。
 人が生活していない高山ですから、もともと国境は曖昧だったのですが、中国が1950年にチベットに侵攻してからキナ臭くなり、一旦は1954年にネルー首相と周恩来首相との間で平和5原則が締結され、納まっていたようでした。
 しかし、59年に中国がインドに侵攻して軍事衝突が勃発し、さらに62年には中印戦争と呼ばれるほどの大規模な戦闘が展開されました。
 中国は周到に準備して先制攻撃を仕掛けて優勢となり、実質的な国境線が南に移る事態になっています。
 その後、インドと中国の直接の交戦は発生していませんが、中国はパキスタンに軍事支援をおこない、65年にはインドとパキスタンの間に戦争が発生し、これによりインドが核弾頭を開発するようになったと言われています。
 このような背景から、現在の日本で発行されている世界地図を見ると、ヒマラヤ山脈には国境線が描かれていないか、インドと中国のそれぞれが主張する国境線が点線で描かれています。

 同じように、しばらく以前の地図では国境線が点線になっていたのが、アラビア半島のサウジアラビアとイエメンの間、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の間でした。
 もともとは遊牧民が生活している地域ですから、ヒツジやラクダの赴くまま人間も移動し、領土という観念はなく国境も意味のない地域でした。
 したがってサウジアラビア政府が発表している国土面積と国際連合が発表している数字には35万平方キロメートルもの差がありました。
 日本の国土面積の38万平方キロメートルと比べると大変な差があることが分かります。
 そのような地域に国境紛争が発生したのは、石油が発見されたからですが、近年、話し合いで解決し、現在の地図には明確な国境線が引かれています。

 8月10日に李明博大統領が竹島に上陸して騒動になりましたが、北米にも似たような問題が発生したことがあります。
 デンマーク領である世界最大の島グリーンランドと北米大陸側のカナダ領エルスミア島の間は、1973年に海峡の中間を国境線とすることで両国が合意しましたが、そのとき竹島の5倍程度の面積のランス島の帰属を明確に合意できませんでした。
 そこで2005年5月にカナダのビル・グラハム防衛大臣が個人で島に上陸してカナダ国旗を立てるという事件が発生しました。
 デンマークはただちに軍艦を派遣して、カナダ国旗を降ろしてデンマーク国旗を立てたと言われています。
 わずか1・3平方キロメートルの小島が問題になるのは、漁業権や資源の採掘権ではなく、温暖化で北極航路が実現すると、この海峡が重要な通路になるからだということです。

 最後にグーグルが引き起こした領土問題を御紹介したいと思います。
 グーグルマップには国境線が書き込まれていますが、中米のニカラグアとコスタリカの国境線が間違って、コスタリカ側に2・7kmほど入り込んで書かれていました。
 そこで、シメタ!とばかり、2010年にニカラグア軍のエデン・パストーラ司令官がコスタリカ側に入ってニカラグアの国旗を掲揚する事件が発生しました。
 グーグルはあわてて地図を修正して問題は解決しましたが、同じ問題はタイとカンボジアの国境線についても発生し、これも問題になりました。
 飛行機の機内誌には世界地図が載っていますが、どれにも国境線が入っていないのは、このような問題を避けるためです。
 これからますます鉱物資源も生物資源も各国の存亡にかかわる時代になると領土問題は増加しますが、国民一人一人が領土や国境に関心を持ち、毅然と対応することが重要になると思います。





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