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論文

 異例の年末選挙が終わり、2006年、2009年、2012年と3年ごとのオセロゲームとなり、小選挙区制度の問題も浮かび上がってきたと思います。
 この選挙については、今週、様々な角度から分析されていますが、今日は女性の社会進出という視点から選挙結果を分析してみたいと思います。
 今回は300の小選挙区で当選した女性の国会議員は16名で5・3%、180人を選ぶ比例区では22人で12・2%、合計すると38人になり7・9%でした。
 これまで1986年の選挙の1・4%から次第に増加して、2005年には9%に上がり、2009年は小沢ガールズなどが躍進して11・3%になりましたが、今回また低下してしまいました。
 これが世界各国と比較して多いか少ないかという判断ですが、列国議会同盟(インターナショナル・パーリアメント・ユニオン)という各国の議会が参加して作る組織が各国の女性国会議員の比率を発表していますので、比較しますと、1位がルワンダで何と56・3%です。

 これには特殊な事情があり、1994年の民族紛争により、国民の10%が殺戮されるという大量虐殺により、多数の男性が死亡した結果、女性の人口比率が70%にもなるという異常事態となり、様々な分野に女性が進出せざるとえないという状況になったからです。
 その結果、2003年に新憲法が成立したとき、意思決定機関の30%は女性にするという条項が作られ、日本の衆議院に相当する下院では80議席のうち24議席は女性に割当てられ、さらに2008年の選挙で21人が割当とは別に当選して56%という数字になったわけです。
 以下はスウェーデンが47%、南アフリカ共和国が45%、キューバが43%、アイスランドが43%などと続き、日本の7・9%は何と116位です。
 列国議会同盟の統計には146カ国の数字がありますが、下から数えた方が早いという状態です。

 安倍自由民主党総裁は選挙後の記者会見で、新しい内閣では大臣の3割は女性を任命すると発言しておられますが、これまで18名の大臣のうち、おおむね2名であった女性大臣が5名か6名になることになりますが、これも世界では多いとは言えません。
 フィンランドンの2011年からの現内閣では、19名の大臣のうち9名が女性で47%ですが、2007年4月に成立した内閣では20名のうち12名が女性で60%でした。
 スウェーデンは現在の内閣では24名の大臣のうち13名が女性で54%、フランスは今年5月に選ばれたオランド大統領が大臣の半数を女性にするという公約を実行し、34名のうち17名と半数が女性になっています。

 それぞれの国の歴史や文化を背景にしていますから、進んでいるとか遅れているということにはなりませんが、日本の現状は多くの国々と比べて女性の社会進出が遅れていることは確かです。
 それを裏付ける統計がいくつもあります。
 スイスの民間団体「世界経済フォーラム」が最近発表した男女の平等の程度を評価した「男女格差指数」という調査結果を見ると、135カ国を対象とした調査で、上位は1位アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェー、4位スウェーデン、7位デンマークとスカンジナビア諸国が独占していますが、日本は何と101位です。
 しかも一昨年の94位から昨年の98位、そして今年は101位と順位を下げています。
 これは政治、経済、教育、健康の4分野を14の資料で評価した結果を綜合した順位ですが、政治は110位、経済は102位、教育は81位、健康は34位と芳しくありません。

 国際連合の下部組織である国際連合開発計画(UNDP)が女性の国会議員の比率、管理職の女性の比率、男女の賃金格差を合わせて、男女の不平等を示すGEM(ジェンダー・エンパワーメント・メジャー)という国際比較を発表していますが、その2009年版によると、ここでも1位スウェーデン、2位ノルウェー、3位フィンランド、4位デンマークとスカンジナビア諸国が上位で、日本は107カ国中57位です。
 問題は2001年の31位、2002年の32位から、2006年には42位、2007年には54位、そして2009年には57位と次第に順位を下げていることです。
 それ以外にも男女の格差を評価する指標はいくつもありますが、例えば「グローバル・ウィメン」という組織による企業の管理職の女性の比率を比較している統計によると、1位はノルウェーで44%、2位がスウェーデンで22%、3位がフィンランドで17%とスカンジナビア諸国が続き、日本は27位で1・4%にしかすぎません。
 これまでの数字と比較すると意外に高い順位と思われるかも知れませんが、これは31カ国を対象にした調査で、日本以下はバーレン、アラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビアというイスラム教国ですし、そのイスラム教国でもクウェイトは2・7%、オマーンは2・3%と日本よりも上位です。

 このような日本の状態の何が問題かということです。
 日本では奥様といわれる女性が家庭に存在し、御局様といわれる女性が会社に存在し、それぞれ実効支配しているといううがった見方もできますが、やはり問題は社会の多様性が欠けるということだと思います。
 今回の衆議院選挙は国際情勢も国内情勢も急速に変化しているなかで、民主党政権が適切に対応できなかったことが大逆転の要因ですが、社会が急速に変化するときは、男性の大物が仕切るという既存の思考だけでは対応できなくなります。
 そのようなときに多様な人材が組織に存在することが重要になり、女性の活躍が期待されることになります。
 フランスのオランド政権の大臣には、フランス領ギニア出身の女性、アルジェリア出身の女性、さらには韓国系の女性までが任命されています。
 これからの日本社会に必要な多様という性質を考えると、今回の選挙結果の抱える問題の一側面が見えてくると思います。





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