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論文

 昨年12月のクリスマスの時期は北海道、東北地方、北陸地方が豪雪になり、安倍総裁が自由民主党の幹部会合で豪雪対策本部を設置するように指示を出したほどでした。
 豪雪になると、道路や鉄道が不通になったり、遅れたりするだけではなく、除雪や屋根の雪下ろしが大変になるということを反映した対策です。
 2005年度の豪雪のときは雪下ろし中に亡くなった方が152名という戦後3番目の記録になりましたが、以後は12名(06)、47名(07)、21名(08)、56名(09)と減少しました。
 ところが、2010年度は全国で死亡が100名、11年度は95名と増加し、それ以外に重傷者が325名、軽傷者が368名にもなっています。
 2012年度は、まだ途中なので、全国の集計は出ていませんが、1月10日現在で、北海道ではすでに死亡が14名、重傷が49名、軽傷が124名と昨年以上のペースですし、秋田県でも死亡4名、重傷27名、軽傷36名となっています。

 このような事故に対して、国土交通省も地域ぐるみで除雪作業をするための手順を示す冊子を作成して配布などしていますが、もうひとつの問題は、豪雪地帯では、全国平均以上に過疎地域、限界集落が増加しているうえに高齢者の比率も高いので、人手が足りないということです。
 そこで何とかしようと知恵を絞った地域が登場してきました。

 都会の元気のある人々が雪下ろしに参加する雪下ろし体験ツアーです。
 岐阜県飛騨市神岡町は奈良時代から亜鉛や銀を採掘していた神岡鉱山で有名でしたが、これは2001年6月に採掘を中止しました。
 それに代わって現在では、坑道内部の地下1000mの地点に小柴昌俊先生がノーベル物理学賞を受賞された研究の実験施設となった「スーパーカミオカンデ」のある場所として有名になっていますが、日本有数の豪雪地帯でも有名です。
 その神岡町の新潟県との県境に近い山之村(やまのむら)地区は標高1000mの高原に170人ほどが生活する過疎地域ですが、積雪3m以上にもなり、しかも高齢者の比率が高いため、雪下ろしが満足にできません。
 そこで飛騨市観光協会と地元の有志が相談して、高山市のバスセンターからのバス代を含め、1泊3食と宿泊の費用を含めて1万8800円のツアーを企画しました。
 参加者は地域の診療所と一人暮らしのお年寄りの家の雪下ろしを行うとともに、郷土保存食の寒干し大根作りを体験することができます。
 昨年から行われていますが、今年は今週末の19日から20日にかけて開催されます。(問合:濃飛バス高山トラベルセンター 0577−32−3267)

 他の地域でも同様の企画はあり、福島県会津地方の昭和村、金山町(かねやままち)、三島町(みしままち)、只見町(ただみまち)では、これまで16年間「雪おろし体験ボランティア」を実施しており、今年も2月1日から3日まで行われます。
 これも2泊3日で、2泊分の宿泊費、7食分の食費、郡山駅からの往復交通費を含めて2万6000円の参加費です。(問合:ハートネットふくしま 024−954−7959)
 これ以外にも、新潟県魚沼市入広瀬(いりひろせ)をはじめ、各地で雪下ろしツアーが企画されています。
 これまで御紹介したのは地域の人々が中心になった企画ですが、都会の人々が企画した雪下ろしツアーもあります。
 今週の1月12日(土)には富山県南砺市(なんとし)にある世界遺産の菅沼集落に、東京の「丸の内朝大学」の受講生70名が訪問し、伝統の雪下ろし道具を使って雪下ろしを体験しています。

 このような例を御紹介したのは、今日が「防災とボランティアの日」に制定されているからです。
 今日1月17日は18年前1995年に阪神淡路大震災の発生した日です。
 このときは政府や地方自治体の対応が遅れて批判されましたが、一方で学生を中心としたボランティアが活躍し、「ボランティア元年」と言われるようになりました。
 そこで95年12月に1月17日を「防災とボランティアの日」、前後3日間を含む1月15日から21日の1週間を「防災とボランティア週間」とすることが閣議決定されました。

 さらに、そのようなボランティア活動を支援するために、1998年12月1日に「特定非営利活動促進法」が制定され、それまで任意団体であったNPOが法人格を取得することが可能になりました。
 その結果、1998年には23であったNPO法人が、現在では4万7000近くまでになり、ボランティア活動が個人の善意だけではなく、法人格を持つ組織としての活動となりました。
 一昨年の東日本大震災でも、もちろん自衛隊、警察、消防、自治体の方々の救援活動も活躍しましたが、数十万人のボランティアが応援し、最早、ボランティアが社会に不可欠の組織となり、「新しい公共」と呼ばれるようになってきました。

 鳩山総理大臣は2010年1月22日の施政方針演説で「市民やNPOが教育、子育て、街づくり、介護、福祉などに活躍しており、こういう人々の力を「新しい公共」と呼び、「官」をスリムにすることにつなげる」と言われましたが、特別な施策は実現しませんでしたし、菅総理大臣も2010年6月11日の所信表明演説で、「鳩山前総理の力を入れられた「新しい公共」を(中略)応援する」と演説されましたが、これも特段の政策にはなりませんでした。
 今月11日、安倍内閣の緊急経済対策で20兆円を超える支出をすることが閣議決定されましたが、財源の問題を考えると、財政をさらに悪化させる可能性大です。
 そのためにも、国民が公共的な仕事に参加する「新しい公共」という考え方は重要で、民主党政権が主張したからと無視するのではなく、自由民主党政権でも検討すべき課題だと思います。





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