TOPページへ論文ページへ
論文

 今日は3月14日、3・14ですが、3・14と言えば円周率ということで、今日は「円周率の日」さらには「数学の日」になっています。
 円周率の日が数学の日になるのは飛躍するようですが、今から約4000年前の古代バビロニアの粘土版に円周率の記録があり、その近似値として3+1/7(=3・142857)という数字が記述されているほどですから、数学の起源の時代から円周率には関心があったということです。
 円周率は円の直径に対して円周がどれだけの長さになるかを示す数字ですが、これが「π(パイ)」と呼ばれるのは、周辺を意味するギリシャ語「ペリフェレイア」の最初の文字が「π」なので、それに由来します。

 その古代ギリシャでは、世界三大難問といわれる幾何学の問題があり、目盛りのない直線の定規とコンパスだけで
  1)任意の角度を3等分する方法
  2)ある立方体の2倍の体積をもつ立方体を作る方法
  とともに
  3)ある円と等しい面積をもつ正方形を作る方法
を求める問題が挙げられていました。

 最初の問題は45度、90度、180度など、特定の角度については可能ですが、60度を20度ずつに分けることはできないことが証明されており、したがって、どのような角度でも3等分できる方法はないことになります。
 2番目の問題は1837年にフランスの数学者が不可能であることを証明して決着がつきました。
 3番目の問題は1880年にドイツの数学者が解決不可能であることを証明しましたが、この問題を解くためには円周率が必要ということになり、古来、多くの数学者どころか、著名な数学者のほとんどが一度は円周率を求める研究に挑戦してきたほどの難問になったのです。

 古代から円周率を計算する基本的方法は、ある大きさの円の内側に接する正6角形を描きますと、その一片の長さが円の半径に等しくなるので、その長さの合計を計算し、次にそれを正12角形にし、さらに正24角形、正48角形と細かくして辺の長さを合計していけば、次第に円周の長さに近付くという方法です。
 この方法で紀元前3世紀の有名な数学者アルキメデスは正96角形まで計算して3・14という円周率を示し、それ以後、数多くの数学者が挑戦しますが、17世紀以後は無限級数を計算する方法が主流となり、1665年にアイザック・ニュートンが小数点以下16桁まで計算し、以下、次々と増えていきます。

 1853年には生涯を円周率の計算だけに捧げたといわれるウィリアム・シャンクスという数学者が707桁まで計算して発表しましたが、イギリスのオーガスタ・ド・モルガンという数学者が、間違っている可能性が高いと予言し、1945年にファーガソンという数学者が540桁を計算し、シャンクスの数字の528桁以下が間違っていることを明らかにしました。

 それ以後はコンピュータの時代となり、一気に桁数が増加し、1949年には世界最初のコンピュータといわれるENIACを70時間使用して2037桁を計算したことを契機に、1958年には1万桁、61年には10万桁、67年には50万桁、83年には東京大学の金田康正助教授が1000万桁、2009年には筑波大学で2兆5769億桁に到達しますが、この頃から大型コンピュータを使うのではなく、多数のPCを並行して計算する時代になり、2011年には日本の会社員近藤茂さんとアメリカのアレキサンダー・イーさんがPCを1年1ヶ月使い続け、10兆桁まで計算しています。

 このような想像を絶するような桁数の円周率を計算することに意味があるかというと、まったくない訳ではないようです。
 円周率を100万桁まで印刷した『π』という書籍が発売されていますが、数字が並んだだけの本をだれが買うのか不思議に思われるかも知れません。
 これは0から9までの数字が不規則に現れる乱数表として使われているのです。
 乱数の条件は、それぞれの数字が登場する順序に規則はないが、ある範囲では、それぞれの数字が出現する回数がほぼ均等であるということです。
 つまり7だけが頻繁に出現するような数字の列は乱数とは言えないということです。
 そこで円周率の5兆桁までの数字の出現頻度を調べてみると、どれも5000億回前後で要件を満たしています。

 もうひとつの意味は、コンピュータで計算するために高速で計算できる手順(アルゴリズム)を開発するために円周率の計算方法が役に立つということです。
 しかし、世の中にはさらに分かりにくい挑戦をしている人々が存在します。円周率を何桁まで暗記できるかという挑戦です。
 √5を「富士山麓に鸚鵡鳴く」と覚えた経験がある人は多いと思いますが、円周率にも「産医師異国に向こう」で3・14159265と小数点以下8桁を覚える言葉がありますし、30桁まで覚える言葉もあります。
 ところが、そういう言葉を使うのではなく円周率の暗記に挑戦している人も存在します。
 1973年井イギリスのティモシー・ピアソンが1210桁を暗唱したのが最初で、1995年に学生であった後藤裕之さんが4万2195桁、2005年には中国人の学生呂超さんが6万7890桁、2006年10月には当時61歳の千葉県の原口證(あきら)さんが、16時間30分をかけて10万桁の暗唱に成功しています。
 ご本人のオフィシャル・ウェブサイトによると、物語にして覚えるようですが、そのサイトに掲載されている10万桁の数字を見ると、暗唱することが意味があるかどうかより、挑戦する意欲に価値があるのだと思います。





designed by BIT RANCH / DEGITAL HOLLYWOOD
produced by Y's STAFF
Copyright(c) Tsukio Yoshio All Rights Reserved.