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論文

 地球の誕生は46億年前、その地球の水中に最初の原始的な生物が登場したのは40億年前、その一部が水中から陸地に上陸したのが4億年前、そして猿人といわれる人間の最初の祖先が誕生したのが500万年前、我々の直系の祖先である新人が登場したのが20万年前というように説明されますが、なかなか実感が湧きません。
 そこで地球が誕生してから現在までの46億年を1年に圧縮し、1月1日の午前零時零分に地球が誕生し、現在が12月31日の23時59分59秒とすると、水中に原始的な生物が誕生したのが2月中旬、生物が陸地に上陸したのが11月末になり、猿人が登場したのは12月31日の午後4時、新人が登場したのは23時58分、すなわち今から2分前ということになります。
 その2分の間では今から6秒前に人間は農業を手中にし、1・2秒前に産業革命を実現したことになりますから、人間が如何に地球の新参者かが実感できると思います。

 このように物事を時計で表現すると分かり易いということで、自然や人間社会の現状や将来を時計で表現する試みがいくつもあります。
 有名な例が「ドゥームズデイ・クロック」すなわち「人類最後の日の時計」と呼ばれる時計で、人類が滅亡するまでの時間を示すものです。
 これは歴史のある時計で、1947年にアメリカの原子力科学者会議が発表しました。
 その契機は2年前の1945年に日本に原子爆弾が投下されたことで、このようなことを繰返せば人類は滅亡してしまうという危機感から、滅亡するときまであと何分残されているかということを表示する時計です。

 時計が発表された1947年には終末まで7分に設定されましたが、1953年にアメリカとソ連が水爆実験に成功したときに残り3分まで進行し、1963年に米ソが部分的核実験禁止条約を締結したときに7分に戻り、1972年に米ソが軍縮条約を締結したときには12分まで後退しました。
 その後、終末に接近したり遠離ったりを繰返し、もっとも終末から遠離ったのは1991年のソ連が崩壊したときで残り17分になりました。
 ところが、その後、イランが核開発をしたり、北朝鮮が核実験を強行し、さらに福島第一原子力発電所の事故が発生し、現在は残り5分になっています。

 しかし、最近では核問題だけではなく、地球温暖化など環境問題が人類の将来を左右しているということで、1992年に日本の旭硝子財団が「エンバイロメンタル・ドゥームズデイ・クロック」、すなわち「環境版人間最後の日の時計」を発表しました。
 これは世界の数千人にアンケート調査をし、地球環境が悪化することによって人類存続の危機の程度を12時間の時計で表現したもので、安全であれば0時から3時、きわめて危険な状態であれば9時から12時の時刻で表現しています。
 開始したときには7時49分で「かなり不安」という程度でしたが、昨年には9時23分の「きわめて不安」になり、環境問題が人類の存亡に大きく影響していることを明らかにしています。

 このように最後の日まで何分という時計以外に、地球の現状をデジタル方式で表現するカウンターも数多くあります。
 一例として、急速な人口の増加は人間の将来を大きく左右しますが、人間が毎秒何人の割合で増えているかを計算し、それを表示しているデジタルカウンターがいくつもインターネット内部にあります。
 有名なものはアメリカの国勢調査局のホームページで、世界の人口とアメリカの人口を時々刻々とデジタルカウンターで表示しています。
 もちろん、実際に数えているわけではなく、数式で計算しているのですが、ほぼ1分間で150人増えていますから、1年で8000万人が増加していることになります。
 1桁目の数字が読取れないほどの速度で変わっていく様子を眺めると、人類が地球の限界に到達するのも時間の問題という気分になってきます。

 「ワールドメーターズ」というサイトには、実に様々なデジタルカウンターが並べられています。
 例えば、世界各国の政府が1日に支出している軍事費、医療費、教育費のカウンターがありますが、下6桁は目にも留まらぬ早さで数字が動いています。
 書籍のカウンターを見ると15秒に1册の割合で出版されているようですから、年間210万種類の書籍が出版されていることが分かります。
 自動車は0・6秒に1台の割合で生産されているので今年1年では5700万台が生産され、コンピュータは0・1秒に1台の割合で販売されているので、今年中には3億台以上が販売されていることになります。

 人間の消費の勢いが伝わってきますが、それが環境に及ぼす影響を示すカウンターも多数用意されています。
 今年になって消滅した森林面積は今日までで240万ヘクタールで、この勢いで進めば年末までには510万ヘクタールが消滅することになります。
 これは日本の森林面積の20%に相当し、このままの勢いで進めば750年ほどで地球の森林は消滅することになります。
 同様に今年になって砂漠になってしまった土地の面積は今日までで550万ヘクタールで、年末までには1180万ヘクタール、東北地方、関東地方、北陸地方を合計した面積が砂漠になる計算です。
 化石燃料についても、今日1日で汲み上げた原油で地中に存在する量を割算すると14800日、40年で涸渇するとか、天然ガスについては6万日、165年で涸渇するというようなことが分かるカウンターもあります。

 これらは単純な数式で計算しているだけの数字ですが、それでも地球環境が置かれている現在の状況を示していると思います。
 このような時計やカウンターはインターネット経由で簡単に見ることができますので、アベノミクスによる株価に一喜一憂することも日常生活にとっては重要ですが、ときにはこのような数字を眺めながら孫子の世代や人類の将来を考えることも必要ではないかと思います。





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