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論文

 今日は国際連合の人口基金が定めた「世界人口デー」です。
 どのようにして認定したか分かりませんが、1987年の7月11日に当時のユーゴスラビア(現在はクロアチア共和国)の都市ザグレブで誕生した男の子供を50億人目と認定し、国際連合のデクエヤル事務総長がザグレブをわざわざ訪問して祝福したという出来事がありました。
 家族としては子供の誕生は嬉しいことですが、世界全体としては人口が増えていくことは問題でもあるので、世界の人々が人口問題に関心を持ってもらおうと、その2年後の1989年に7月11日を「世界人口デー」に制定したというのが経緯です。

 その心配の通り、12年後の1999年10月12日には世界の人口が60億人を突破し、さらに12年後の2011年10月31日には70億人を突破し、今度は国際連合人口基金も特定の子供を70億人目とすることはあきらめ、10月31日に産まれた子供はすべて70億人目と認定することにしました。
 計算してみると、約23万人が70億人目になります。

 これがどのくらい異常な状態かを歴史的に調べてみます。
 60億人が70億人になるのは10億人が増えたことになるわけですが、過去、10億人が増えるのにどれだけの年数が必要であったかを計算してみると、初めて10億人を突破したのが1802年で、20億人になるのには125年かかり1927年、30億人になるのには34年、40億人になるのには13年、50億人になるのには13年、60億人になるのには11年かかっています。
 最近でこそ増加の傾向が緩やかになってきましたが、1798年にロバート・マルサスが『人口論』で予言した通り、幾何級数的に増加してきました。

 今後、どのようになるのかについても、先月の6月13日に国際連合経済社会局が2100年までの予測を発表しましたが、それによると、中間値で2050年に96億人、2100年に109億人になると予測されています。
 実はこの経済社会局は2004年に2300年までの人口予測を発表していますが、最大に増加する場合、2100年に140億人、2200年に210億人、2300年に360億人という驚くべき数字になっています。
 実際は戦争や飢饉や病気によって、このようにはならないと思いますが、大変な問題です。
 しかし、日本にとっては逆に人口が減少していくという問題があります。
 国際連合経済社会局が世界各国の2100年までの人口を5年単位で予測していますが、日本は現在の1億2700万人から、2030年には1億2000万人、2050年には1億800万人、2100年には8400万人に減少していくという結果になっています。
 現在、日本の人口は世界で10番目ですが、2030年にはフィリピン、メキシコに抜かれて12番目、2050年には、さらにイラン、ベトナム、エジプト、エチオピアに抜かれて16番目になります。

 これは世界全体の人口減少に貢献しているという意味では結構ですが、国力という点では問題になります。
 以前も御紹介しましたが、ベネチア共和国は697年の建国から、次第に勢力を拡大し、一時は地中海を制覇する大国でしたが、17世紀に入って、現在の日本と同様に若者の結婚比率が減少し、結婚しても子供を作らない家庭も増加し、国力が衰退して、1797年にナポレオンに降伏して消滅したという事例があります。
 そこで日本でも少子化担当大臣が任命され対策が検討されています。
 日本の合計特殊出生率、すなわち女性が一生に産む子供の人数が最低であった2005年の1・26人から、少しずつ増加し、昨年は1・41人まで回復してきましたが、同じような状況からフランスは2・01人、イギリスは1・96人、アメリカは1・89人に回復しており、日本の政策は十分な効果を上げているとはいえない状況です。

 出生率は、雇用環境、保育環境、ワークライフバランスなど職場の環境に影響されるといわれますが、そこで注目されているのが福井県の政策です。
 福井県の2011年の合計特殊出生率は沖縄の1・86には及びませんが、1・56で都道府県の中では9番目です。
 それに貢献しているのが「企業子宝率」という指標です。
 これは社員が在職中に育てている子供の人数を調べたもので、福井県内の2・0を越えている企業を「子育てモデル企業」として認定する制度です。
 昨年の調査ですが、県内の従業員300人未満の3200社のうち297社の回答を分析すると、従業員の少ない会社ほど子宝率が高い傾向が見られたそうです。
 新聞に紹介されている事例では、敦賀市にある塗料店では子宝率2・48、越前市にある病院では2・21、高浜町にある建設会社では2・06、福井市にある造園会社では2・03など、2を超える会社が多数あります。

 今年5月、横浜市が保育施設への待機児童をゼロにする目標を達成しましたが、これでも分かるように、少子化担当大臣を任命しても、国が実施する政策は十分に効果をあげていないのに比べ、自治体は地域の実態に合わせた政策で問題を解決しています。
 地域主権や地方分権が唱えられて半世紀近くたちますが、なかなか実現が困難です。
 しかし、少なくとも国民の生活に関係する分野については基礎自治体が独自の政策で対処することが必要だと思います。





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