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論文

 今週の月曜日23日、将棋の世界で女王、女流王座、女流名人の女性3冠を達成している里見香奈さんが、プロ棋士を養成する「奨励会」で勝って、奨励会では最高位の3段に昇段しました。
 それほど珍しい話題でもないと思われるかも知れませんが、何と2段になったのも女性で最初、3段になったのも女性で最初という新記録だそうです。
 ちなみに将棋の世界ではプロ棋士は4段からですが、現在、162名で、すべて男性です。
 プロ棋士になるのは26歳までという年齢制限があり、しかも毎年2回開かれる三段リーグ戦で1位か2位になることが条件のため、1年に4人しか4段にはなれませんが、里見3段は現在21歳なので5年間は機会があり、女性最初のプロ棋士になる可能性は十分にありそうです。

 これは一例ですが、世の中には規則として男女を差別する制約はないものの、実際には男女の格差がある分野が数多くあり、日本には以外に多いのです。
 全体として日本の現状を象徴する調査結果が10月に発表されています。
 世界経済フォーラムが毎年発表している「世界男女格差報告書」の最新版ですが、日本は136カ国中105位で、一昨年の98位、昨年の101位よりも順位を下げています。
 これは「経済活動への参加機会」「就学機会」「寿命と男女の比率」「政治活動への参加機会」の4項目について、評価した結果ですが、それぞれ102位、92位、36位、114位となっていますから、男女格差が大きい国と判断されるのももっともだと思います。

 とりわけ全体の順位を下げているのが、政治活動への参加の順位が低いことですが、列国議会同盟(IPU)が発表している衆議院に相当する組織の議員の女性比率について、日本は8・1%で146カ国中122位という状態です。
 世界の平均が21・8%、北欧諸国では42%、ヨーロッパ諸国では25%、アジア諸国でも19%ですし、一般に女性の活動が制限されていると思われるアラブ諸国でも18%ですから、日本は異常に少数ということになります。

 しかし、日本も少しずつ女性に比率が増えている傾向にあります。
 裁判官では1996年の8・9%から2011年には17%になり、15年間で1・9倍、検察官では4・1%から14・1%で3・4倍、弁護士では6・9%から16・9%で2・4倍になっています。
 年度はやや違いますが、女性自衛官も1970年には1000人程度でしたが、最近では1万2000人と12倍に増え、比率も5%になっています。
 しかし、世界と比較するとまだまだで、アメリカは陸軍で15%、海軍で13%、空軍で18%になっていますし、フランスは全軍で20%、カナダは15%、オーストラリアは10%です。
 任務についても、カナダは潜水艦の乗務以外はすべて女性に解放、フランスは潜水艦の乗務と暴動鎮圧以外はすべて、オーストラリアは身体的条件を満たせばすべての任務に就くことが可能になっています。

 このような男性中心の日本社会に、人数ではまだまだ多数ではありませんが、女性が突破口を開けはじめた分野が増えてきました。
 登山を愛好する女性の「山ガール」や鉄道を愛好する女性の「鉄子」は以前から有名ですが、しばらく前から登場したのが「どぼじょ」や「狩りガール」です。
 「どぼじょ」は女性の土木技術者のことで、荒っぽい職場の印象がある土木建築工事の現場監督などに憧れる女性が増えてきたことです。
 1991年にリクルートが土木建築などのブルーカラー職場を中心にした求人雑誌『ガテン』を発行して種が蒔かれたのですが、これを社会現象にしたのが松本小夢(こゆめ)さんの漫画『ドボジョ!』です。
 3K職場といわれ、学生の志望や就職の人気が低迷している土木業界に危機感をもつ土木学会が今年3月には「土木アラモード」という連続シンポジウムを開き、第一回は「ドボジョ」を話題にするまでになりました。

 日本はシカやイノシシなど農作物に被害を及ぼす野生動物が増えている一方で、猟師が高齢化して人数も減少して野生動物を減らすことが難しい状況になっています。
 そこで颯爽と登場してきたのが「狩りガール」です。
 第一種猟銃免許を取得し、実際に山に入ってシカやイノシシを撃って解体し、最後は食料にもするという女性です。
 北海道では「ザ・ウイメン・イン・ネーチャー:シュート・アンド・イート」という女性ハンターのネットワークが出来、33名の会員のうち20名がハンターという組織です。

 また男の晴れ舞台と思われていた応援団長にも女性が登場してきました。
 東京六大学の応援部で構成する「東京六大学応援団連盟」の来年度の委員長が先週決定したのですが、早稲田大学4年生の木暮美季さんが委員長になりました。
 連盟は1947年に結成され67年の歴史がありますが、初めての女性委員長です。

 このような動向をどのように理解するかについては2つの視点が重要だと思います。
 今年前半に全日本柔道連盟で暴力問題、セクハラ問題、助成金不正受給問題などが発覚し、会長が交替する事態になりましたが、その結果、それまで男性だけであった理事に橋本聖子さん、谷亮子さんなど4人の女性が任命されました。
 それを反映して日本オリンピック委員会でも30名の役員のうち20%の6名を女性にするという方針を発表し、当面、橋本聖子さん、高橋尚子さんなど4名が就任しています。
 社会は男女によって構成されているので、男性だけの視点で組織を運営すれば偏り、社会の反応を見誤るということです。

 もう一点は高齢社会が進み労働力が不足していきますが、男性中心であった職場にも女性が進出し重要な役割を果たしてもらうことが必要になるということです。
 「日の本は岩戸神楽の初めより女ならでは世の明けぬ国」という狂歌もありますので、ぜひ来年は女性の力によって新しい日本が始まることを期待したいと思います。





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