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論文

 先週の土曜日の12日に、世界の約200の国と地域が参加してパリで開かれていた第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が当初の予定を1日延長して2週間にも及ぶ会議を終了しました。
 その内容で、もっとも重要なことは気温の上昇を産業革命以前より2度以下に抑え、さらに1・5度未満にする努力をすると決めたことです。
 10年ほど前には地球温暖化よりも寒冷化が進んでいるという学者も何人も居られ、そのような趣旨の本も何冊も出版されていましたから、大変な変化です。
 しかし、産業革命以前から現在まで、すでに0・8度程度上昇していますから、1・5度を目標とすれば残りは0・7度程度しか残っていませんし、世界各国が公表した二酸化炭素の削減目標がすべて達成されたとしても、2100年には2・7度も上昇してしまうと推計されていますから容易な目標ではありません。

 そのためには火力発電所を大幅に減らす、太陽や風力など自然エネルギーの利用を大幅に増やす、二酸化炭素を地中に封じ込める技術を開発するなどの政策も必須ですが、もう一つ重要なことは個人や家庭が努力する、すなわち、チリも積もれば山となるような努力をすることです。
 しかし、冬には暖房の温度を大幅に下げて、家の中でもスキー場に行くときのような服装をして生活せよというようなことでは、なかなか実行できません。
 そこで生活様式を変更しなくても温暖化対策が出来、さらに経済的にも利益があるということであれば、どなたも喜んで実行できると思いますので、そのような例を紹介したいと思います。

 すでに実行しておられるご家庭も多いかと思いますが、まず待機消費電力を減らすという努力です。
 待機消費電力はテレビジョン受像機のスイッチを入れた瞬間に映像が映るように、装置にいつも微量の電気を流しているような電気の消費のことです。
 多いのはガス温水器、エアコン、温水洗浄便座、ビデオデッキなどですが、合計すると家庭で使用する電力の6%になります。
 金額では年間7000円から8000円の節約になりますし、家庭の電力消費は年間2900億kwhですから、その6%は174億kwhになり、日本の現在の太陽光発電量50億kwhの3倍以上の電力が節約できることになります。
 毎回、コンセントを抜けば待機消費電力はゼロになりますが、面倒だという方は2000円程度のスイッチのついたテーブルタップにコンセントを差込んでおいて、使わないときにスイッチを切れば良いということになります。
 次は効率の良い最新の製品に転換するということです。
 代表が照明器具です。
 ここ数年で、東芝、パナソニックなどが白熱電球の生産を中止、さらに最近になり、電球の形をした蛍光ランプも製造中止にするなど長年続いた照明器具が消え、代わりにLED電球が主役になりつつあります。
 そして2013年には、現状で23%のLED灯の普及率を2020年には100%にすることを政府が目指しています。
 これは家庭に恩恵をもたらします。
 60wの白熱電球をほぼ同じ照度の2wのLED電球に変えると、電球自体の値段は10倍くらいに増えますが、消費電力が30分の1で済みますので、仮に毎日6時間使うとすれば、電気代は白熱球の3000円程度に対し、200円くらいになります。4ヶ月もすれば電球代は元が取れてしまう計算です。
 家庭で照明に使用している電力は16%ですから、すべてがLED灯に置き換われば、計算は省略しますが、日本の電力消費量の1.7%を削減できますし、オフィスも工場も同様の改革をすれば日本全体で10%近い節約になります。

 さらに照明だけではなく、家庭にある電化製品を新型に置き換えることも効果があります。
 環境省が公開している「しんきゅうさん」というウェブサイトには、現在使用している家電製品を最新の製品に変更すると、どれだけ電気を節約でき、電気代がいくら減るかをすぐ計算してくれる機能があります。
 一例を計算してみますと、10年前の最新製品であった40インチの液晶テレビジョン受像機を最新の40インチの装置に買い替えると、年間196kwhの電気の節約になり、電気代は5290円減るという結果が直ちに表示されます。
 40インチの液晶テレビは4万円から5万円で売っていますから、10年足らずで元が採れることになります。

 さらに大きな効果があるのは通信で代替できる機能を活用することです。
 電子新聞や電子書籍が普及してきましたが、従来の紙の新聞や紙の書籍と比較すると、消費エネルギーは新聞で20分の1、書籍で40分の1になります。
 慣れない間は不便な感じもしますが、24時間いつでも最新のニュースを読むことができる、読みたいと思った本をすぐに読むことが出来る、保管するのに場所を取らないなどの便益を考えれば環境への効果は絶大です。

 また、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡の支店長が東京の本社に集まって支店長会議を開く場合、これまでのように飛行機や新幹線で集まる場合と、テレビ会議を利用する場合を比較すると、排出する二酸化炭素は260倍も違います。
 通信を使えば2時間の会議は2時間で終わりますが、交通手段を使えば1日を潰すことになり、仕事の効率でも大きな効果があります。
 最近は特異点という言葉が使われるように、従来の制度や習慣が成立しない社会が登場しています。
 ものを大切に使うことは美徳でしたが、新しい製品に買い替えた方が環境問題の解決に貢献する、対面で談話したり会議することと意思疎通が良いと考えられていましたが、通信でおこなうほうが大幅に二酸化炭素の排出を減らすなど、新しい文化を創る時代だと思います。
 いずれにしても、COP21の最後のフランスのオランド大統領の挨拶にあったように「12月12日は人類の心に刻まれる日になる」という言葉のように、近代文明社会の大転換になる可能性があります。





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