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論文

 就職活動の日程が毎年変わり、今年はエントリーが5月一杯になり、いよいよ6月から試験や面接が始まります。
 すでに、どのような職業に就職するか決めておられる方が大半かと思いますが、これからという方のために、興味深い調査結果を御紹介したいと思います。 
 一般社団法人の中央調査社という組織は様々な社会調査をしていますが、昨年9月に実施した「議員、官僚、大企業、警察などの信頼感」という調査の結果が最近発表されました。
 20歳以上の男女1200人に個別面接をして聞き取り調査をしたものですが、国会議員、官僚、裁判官、マスコミ報道機関、大企業、銀行、医療機関、警察、自衛隊、教師という10の職業分野について、人々が、どの程度、信頼できると考えているかを調べた結果です。

 1点から5点で評価をしてもらい平均点を出していますが、信頼感が高い方から1位は自衛隊で3・6、以下、医療関係が3・5、銀行が3・4と続き、信頼感が低い方では8位がマスコミ報道機関で2・7、9位が官僚で2・5、最下位は多くの方が想像されると思いますが、国会議員で2・4です。
 「信頼できる」と「大変信頼できる」を合計すると、自衛隊は56・1%、医療機関は53・4%、銀行が44・7%である一方、マスコミ報道機関は14・4%、官僚は12・2%、国会議員に至っては8・5%で大差です。
 その反対の「信頼できない」と「ほとんど信頼できない」を合計した比率は、マスコミ報道機関が37・6%、官僚は43・3%、国会議員は48・8%で、調査対象の人のほぼ半分が国会議員を信頼できないと思っているという結果です。

 この調査は2000年から行なわれ、昨年が8回目ですが、上位の自衛隊や医療機関が点数を毎年上げているのに対し、マスコミ報道機関、官僚、国会議員は不動の下から3番を維持しており、点数も横ばいですから、この16年間、社会は一定の評価をしていることになります。
 もう一つ「信頼されるように努力してほしい」という調査項目がありますが、国会議員への注文が圧倒的に多く66・1%で、2番目以下は一気に下がり、官僚が7・3%、警察が6・3%、マスコミ報道機関が5・7%です。
 これも16年間の8回の調査の経過を調べてみると、国会議員への信頼回復の要望は2000年の45%から、ほぼ増大一方で66%まで到達してしまったという結果です。
 国会議員の言動への不信感がいかに大きいかを示しています。
 自分たちで選んだ国会議員を信頼できないというのも残念なことですが、頻繁に発覚する国会議員にからむ問題を考えれば当然という結果です。

 このような結果の問題の残念以上なことは、地域や国のために努力したいと考える若い人々が国会議員や地方議員に関心を示さないことだと思います。
 実際、いくつかの職業についての希望の調査結果を調べてみると、それを明確に反映しています。
 まず「13歳のハローワーク」というインターネットサイトに、この4月の1ヶ月間にアクセスしてきた人数の統計によると、医療関係は2位(臨床心理士)、13位(医療秘書)、15位(医師)、16位(看護師)など上位に登場しますし、教育関係も24位()小学校教師)、33位(中学校・高校教師)に登場していますが、政治関係は100位までに出てきません。

 第一生命保険が3歳から小学校6年生までの1100名の児童について、1989年から毎年行なっている「大人になったらなりたいもの」という調査の昨年の結果では、男子が3位に警察官、6位に医者、8位に学者や博士が入っており、女子では3位に看護師、4位に医者、5位に教師が入っています。
 これらの職業は1998年の初回の調査から、順位は上下するものの10位以内に不動の地位を占めています。

 クラレも小学1年生を対象に1992年から「将来就きたい職業」を調べていますが、男子では2位に警察官、8位に医師、10位に研究者が登場し、女子でも4位に教員、5位に保育士、6位に看護師、7位に医師、10位に警察官が入っています。
 これらの職業も最初の調査以来、ほぼ10位以内に位置を確保しています。

 これらすべての調査に共通するのは、政治や行政に関係する職業がほとんど登場しないことです。
 一生懸命探してみると、「13歳のハローワーク」で5位に公務員、34位に外交官、59位に国連職員で、2014年の調査では141位にようやく政治家が登場します。
 クラレの調査で「親が子供に就かせたい職業」の男子の1位に公務員、女子の3位に公務員が登場するだけですが、政治家はどこにも登場しません。

 これは選挙権のない小学生以下の子供に政治家という職業が想像できないという理由があるかも知れませんが、明治以来、あこがれの職業は「末は博士か大臣か」でした。
 1963年には、作家になった菊池寛と友人で政治家になった綾部健太郎を主人公にした「末は博士か大臣か」という映画まで制作されていますから、少なくとも昭和30年代までは研究者も政治家も若者が目指すべき職業であったことが分かりますが、現在では、研究者への関心は高いのですが、政治家は職業としては関心をもたれない状態になっています。
 それは政治家が悪役として登場するドラマが多いこと、一部の政治家の不祥事がマスメディアで大きく取り上げられることなどの背景があると思いますが、やはり政党にとって多数を確保することが重要な目標になっているため、識見のある人よりも芸能人やスポーツ選手など知名度のある人を候補者としてきた戦略の問題だと思います。

 制度が違うので、単純に比較は出来ませんが、アメリカでは日本の大臣に相当する長官の指名には何日間も公聴会が開かれて、徹底して資質を糾すのに対し、日本では総理大臣が任命するだけで、国民には開かれていません。
 これは一例ですが、政治家の言動を開かれた状態にすることが、優秀な人材が政治に向う状況を創り出すのに必要だと思います。





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