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論文

 リオデジャネイロ・オリンピック大会も終盤となり、あと3日で閉会式となりました。
 これまでのところ、日本選手も金メダル*個、銀メダル*個、銅メダル*個を獲得し、好成績をあげています。
 メダルを貰うだけではなく、8位までに入賞するだけでも選手にとっては名誉という価値は十分にありますし、銀という字は「金と良」の組合せですから金よりも良いと言えますし、銅という字は「金と同」の組合せですから金と同じと考えても良いかも知れません。
 しかし今日は、そのような精神論ではなく、即物的に経済的価値はどのくらいかあるかを考えてみたいと思います。

 最初に初歩的なことですが、なぜ1位が金、2位が銀、3位が銅なのかということですが、これは地球に存在する資源量が大きく影響しています。
 地球に存在する金の量を1とすると、銀は100倍、銅はさらに100倍の1万倍程度存在していますから、貴重性がメダルの順番に影響していることになります。
 価格でも地金を1キログラム購入しようとすると、現在の相場では金が440万円、銀が6万7000円、銅が540円ですから、ほぼ存在量に反比例した値段になっていることが分かります。

 オリンピック大会のメダルですが、大きさや素材については国際オリンピック委員会による規定があり、大きさは少なくとも直径60mm以上、厚さ3mm以上となっています。
 材料は、銅メダルは全部が銅、銀メダルは純度92.5%の銀ですが、金メダルは残念ながら、すべてが金ではなく、銀で作って表面に6グラムの金を被せるかメッキすることになっています。
 規定ギリギリの最小の大きさにすると容積は3万4000立方mmで、銀の比重10・5を掛けると、金メダルと銀メダルは360グラム、銅メダルは290グラムになります。
 これを基にして、金属としての価値を計算してみると、銅メダルはわずか150円、銀メダルは2万4000円、金メダルは5万円です。
 ただし、今回は史上最大のメダルで直径が85mm、重量が500グラムなので、銅メダルは270円、銀メダルは3万3500円、金メダルは6万円になります。

 参考までにノーベル賞のメダルは、かつては直径66mmの24Kで作られていましたが、柔らか過ぎて落としただけで曲がってしまうということで、1980年から18Kで作り、表面を24Kでメッキしたものに代わり、重さは約200グラムあるそうです。
 これも失礼ながら地金で計算すると88万円程度になります。
 ノーベル賞は別途1億円近い賞金が授与され、2人であれば半額ずつ、3人であれば3分の1ずつになります。

 古代オリンピックでは優勝者にオリーブの冠が与えられるだけでしたから、メダルが与えられれば十分かもしれませんが、最近では各国のオリンピック委員会や競技団体、さらには民間企業から報奨金が支払われるようになっています。
 日本の場合、日本オリンピック委員会(JOC)から1位に500万円、2位に200万円、3位に100万円が与えられます。
 それ以外に、陸上競技は日本陸上競技連盟から金1000万円、銀600万円、銅400万円ですが、マラソンで優勝し、かつ、日本新記録を出した場合は1億円です。
 水泳競技は日本水泳連盟と民間企業から3200万円、400万円、150万円、自転車競技は日本競輪選手会から3000万円、2000万円、1000万円、体操は日本体操協会から50万円、30万円、20万円、卓球は日本卓球協会から個人戦について1000万円、400万円、200万円、団体戦が400万円、100万円、40万円などとなっています。
 したがって、金銀銅を1個ずつとった萩野公介選手は3750万円、体操の内村航平選手は100万円ですが、金3個、銀1個、銅8個をとった柔道はどうかというとゼロです。
 お家芸で勝って当たり前ということかも知れませんし、オリンピック大会は金銭目当ではないのですが、不公平な感じはします。

 他の国はどうかと調べてみると、キリはイギリスでゼロですから、テニスで優勝したアンディ・マリー選手も名誉と6万円相当の金メダルだけです。
 ピンはシンガポールで金メダルに8500万円の報奨金が支払われますので、マイケル・フェルプス選手を破ったジョセフ・スクーリング選手が獲得しています。
 そのフェルプス選手は優勝5回、2位1回ですが、アメリカ・オリンピック委員会が金に250万円、銀に150万円、銅に100万円を出しますので1400万円、さらにアメリカ水泳連盟も金メダルに750万円を与えますので3750万円の合計5000万円以上を貰うことになります。

 万々歳のようですが、厄介な問題があります。
 アメリカの連邦政府と州政府は報奨金とメダルに税金をかけるのです。
 流石に銅メダルは無税ですが、金メダルは5万7000円、銀メダルは3万円相当として課税されます。
 したがってフェルプス選手は約5200万円の収入に課税されるということになります。

 ノーベル賞の場合、日本では1949年に湯川秀樹博士が受賞されたとき、課税するのかが話題になり、法律を改正して無税にしました。
 同様に、日本ではオリンピック大会に関する報奨金やメダルは非課税になっています。
 というわけで、残り数日ですが、日本の選手の皆さんは税金を心配しないで優勝して下さい。





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