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論文

 アメリカでは昨年の大統領選挙以来、トランプ陣営とマスメディアの戦争が勃発しています。
 例えば、2月17日にはトランプ大統領がツイッターで、フェイクニュース(偽情報)のメディアとして新聞のニューヨークタイムズ、テレビジョン放送のNBCニュース、ABC、CBS、CNNを名指しで列挙し、「これらは私の敵ではなく、アメリカ国民の敵だ」と非難しています。
 またプリーバス首席補佐官は1月20日の大統領就任式の人出の数字がマスメディアとホワイトハウスとで大きく食い違うことについて、「トランプ大統領をおとしめようとするような批判的な報道は看過できない。われわれは座視しない。死力を尽くして抵抗する」などとも発言しています。

 これまで日本でも、マスメディアの誤報はなかった訳ではありません。
 最近でも、NHKが2月に放送した「ガッテン!」で、特定の睡眠薬を飲むことで、糖尿病患者が安全に血糖値を下げることができる」という内容が間違っていると批判され、訂正し謝罪した例があります。
 しかし、トランプ大統領が声高に批判するようなフェイクニュースはほとんどなく、日本では国民がおおむねマスメディアを信頼しています。
 そのような日本の状況を調査した内容が3月10日に発表されました。
 一般社団法人・中央調査社が昨年8月から9月に実施した「第9回・メディアに関する全国世論調査」です。
 全国の18歳以上の5000人を訪問して調査票を渡して記入してもらう方法で実施され、3308人からの回答を集計した結果です。

 第一問がメディアへの信頼度です。
 メディアとしてはNHテレビ、民放テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットの6媒体を対象にし、全面的に信頼している状態を100点、まったく信頼していないを0点、普通を50点として点数を付けてもらった結果です。
 今回の調査では、NHKテレビが70点で1位、新聞が69点、民放テレビが59点、ラジオが58点、インターネットが54点、雑誌が45点という順番でした。
 トランプ大統領が独善的に批判するアメリカの状況とは大違いで、インターネットを利用するフェースブックやツイッターなどよりは既存のマスメディアが信頼されていることを明らかにしています。

 ところが2008年の第1回調査からの推移を見ると、重要な問題が浮上してきます。
 順位は変化していませんが、6種類のすべてのメディアについて信頼度が年毎に低下していることです。
 過去9年間で、NHKテレビは74点から70点、新聞は72点から69点、民放テレビは65点から59点、ラジオは64点から58点、インターネットは58点から54点、雑誌が48点から45点で、いずれも4点から6点の低下です。
 しかし内訳をみると、それぞれのメディアの特徴が明らかです。
 「情報源として欠かせない」という項目では、新聞、インターネット、NHKテレビ、民放テレビ、ラジオ、雑誌の順番
 「情報の量が多い」という項目では、インターネット、新聞、民放テレビ、NHKテレビ、雑誌、ラジオの順番になっています。

 インターネットが急速に存在感を増していますが、これを新聞とインターネットという新旧の代表媒体で比較すると変化が明確です。
 今回の調査でも毎日、新聞を読む人と毎日、インターネットでニュースを読む人の比率が調べてありますが、新聞派は2010年の83%から昨年には70%に減っている一方、インターネット派は25%から43%に増加しています。
 単純な将来推計はできませんが、仮にこの傾向で進んで行くとすると、4年後の2020年にはインターネット派が新聞派を追抜くことになります。

 10歳毎の年代別に調べた統計によっても将来がある程度予測されます。
 昨年の調査結果で、毎日、新聞を読む新聞派は70代で89%、60代で87%、以下、80%、65%、46%と低下し、20代では33%です。
 一方、インターネット派は70代で25%、60代で56%、以下、83%、91%、97%と急増し、20代では98%になっています。
 この数字は情報媒体の世界で巨大な変化が発生していることを示していますが、経済的にも変化を明らかにする数字があります。

 毎年、経済産業省が発表している「特定サービス産業動態統計調査」の媒体別広告費の統計を見ると、インターネットは2005年にはラジオを抜き、2009年には雑誌を、2012年には新聞を抜いており、昨年はNHK受信料収入とほぼ並び、民放テレビの広告費の42%にまで急増しています。
 これも単純な推計で将来を予測することは適切ではありませんが、テレビジョン広告費が現状を維持し、インターネット広告費が現在の勢いで増加していくと仮定して計算すると、9年後の2025年には逆転することになります。
(*電通の調査では2019年に逆転)

 今年1月に「TVストリーミング元年」という話題を紹介させていただきましたが、テレビジョン放送もインターネット経由で同時送信される時代になると、ますますインターネットが優勢になります。
 どうするべきかという方向は、やはり今日ご紹介している調査のメディアの特徴に発見することが出来ます。
 「情報が信頼できる」という項目では、NHKテレビ、新聞、民放テレビ、インターネットの順番で、しかもその比率はNHKテレビと新聞が60%に対して、インターネットは14%でしかありません。
 「情報が分かりやすい」という項目も、NHKテレビ、民放テレビ、新聞、インターネットの順番です。
 重要なのは「媒体(メディア)」ではなく「内容(コンテンツ)」だということです。
 どのように便利で迅速で安価な媒体でも、内容が信頼できなかったり、社会の要請に応えていなければ、見放されるということになります。
 今日ご紹介した調査でも、ラジオはインターネットを上回る信頼度を確保しています。心して情報を用意し、お届けしたいと思います。





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