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論文

 かつてドイツ帝国の宰相オットー・フォン・ビスマルクの「鉄は国家なり」という有名な言葉があります。
 工業社会であった19世紀を象徴する言葉ですが、現在では「情報は国家なり」という時代になっています。
 しかし情報は歴史的にも重要な資源で、情報で発展した国家は数多くあり、その一例を紹介します。
 1494年にローマ教皇アレクサンデル6世の承認のもと、スペインとポルトガルがトリデシリャス条約を締結しました。
 これは大西洋の中央を通過する子午線で世界を二分し、それより東側で新たに発見された陸地はスペイン領、西側はポルトガル領とするという内容です。

 15世紀のヨーロッパの人口は8000万人程度で、最大のフランスが1400万人、ドイツとイタリアが約1000万人で、スペインは500万人、ポルトガルに至っては110万人程度の小国でした。
 そのような小国が、大国を差し置いて世界を2分できた秘密は、スペインとポルトガルが当時の世界全体の情報をもっとも集めていたからです。
 14世紀末に成立したポルトガルのアヴィス王朝の初代のジョアン一世の3男にエンリケという王子がおり、彼が航海のための学校を作り、当時は極秘情報であった世界の地図を収集していました。
 この情報を背景に、未知であったアフリカ大陸の西側を探険し、南端に発見し、さらにインドまで到達したのはすべてポルトガル人だったのです。

 情報は国家なりの時代には、国家や企業だけではなく、個人にも情報は重要ですが、国家や企業と違って組織のない個人には簡単なことではありません。
 しかし現在、個人にはインターネットの内部にウェブサイトという強力な味方が存在します。
 「www」という文字で表されるワールド・ウェブ・サイトという仕組は、一般の人々もインターネットを利用できるようになった時代の1991年にイギリスのティム・バーナーズリーという科学者が発明し、その年の8月に最初のウェブサイトが誕生しました。
 大変に便利なため、10年後の2001年には2900万、20年後の2011年には3億4600万になり、2016年には10億を突破し、現在も増加しています。
 しかし、10億も存在する中から、自分が必要とする情報が掲載されているウェブサイトを発見するのは至難の技でしたが、1996年にスタンフォード大学の大学院生であったラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンがキーワードを入力して検索できるグーグルという技術を開発し、簡単に発見できる社会が実現しました。
 現在、グーグルの利用回数は年間2兆回になっていますから、1日平均で55億回も利用されていることになります。

 多くの方々が日常的に使っておられると思いますが、こんなことを知ることもできますという例を御紹介したいと思います。
 まず交通手段の現状を知ることは大変に便利になっています。
 道路の混雑状況は「日本道路交通情報センター」のウェブサイトを利用すれば、高速道路だけではなく、各県の主要都市については一般道路の混雑状況もリアルタイムで見ることが出来ます。
 さらに雪が降っているときには、現場がどうなっているかを見ることの出来る、インターネット回線に接続されているライブカメラもあり、全国の高速道路の現在の様子を見ることもできますし、世界の観光地の現在の光景も見ることができます。

 飛行機については、民間の商用航空便だけですが、世界中の現在飛んでいる飛行機の位置を時々刻々表示する「フライトトラッカー」や「プレーンファインダー」というウェブサイトがあります。
 画面一杯に飛行機のマークが表示され、時々刻々と移動しており、そのどれかをクリックすると、飛行機会社、便名、出発地と到着地、飛行高度、飛行速度などが表示されます。
 常時、1万から1万2000機が飛んでおり、世界全体を眺めると壮観です。

 船については「シップファインダー」や「マリントラフィック」というウェブサイトを見ると、これも一定規模以上の客船や貨物船だけですが、世界の水の上に浮んでいる船が航行中のものも停泊中のものも含めて2万隻以上が表示されています。
 表示されている船のどれかをクリックすると、その船の名前、種類、トン数、大きさ、国籍、速度、目的地などとともに、これまで航行してきた経路も見ることができます。

 これらは一般の人には面白いなあという程度ですが、役に立つ情報を得られるウェブサイトも多数あります。
 携帯電話を買おうとする場合、どこの会社にするかは料金で判断する場合が普通ですが、各地を旅行する人には、通じる範囲が重要になる場合もあります。
 実際、山奥にヘリコプターが墜落して、多くのマスメディアの記者が駆けつけたとき、ある会社の携帯電話は通じなかったため、記事を遅れないということがあったそうです。
 そこで携帯電話各社は通じる範囲を表示した地図をウェブサイトに掲載していますが、「オープンシグナル」というウェブサイトを御覧いただくと、世界中の携帯電話会社の通話可能範囲を確かめることができますので、自分の移動範囲を考慮して電話会社を選ぶことができます。
 携帯電話用のアプリケーションを使えば、付近のワイファイサービスのある場所や携帯電話の基地局の位置を知ることも可能です。

 頻繁に役に立っては困る情報ですが、「新・全国の放射能情報一覧」という日本全国の4285地点の放射線量を時間あたりマイクロシーベルトで地図上に表示しているウェブサイトもあります。
 10分毎に更新されており、特に原子力発電所の周辺については細かく表示されていますから、心配な方はご覧になると良いと思います。

 インターネットならではの情報はリアルタイムで変化する情報です。
 世界全体の人口、国別の人口、堕胎される胎児の数、自動車、自転車、コンピュータなどの生産台数、原油の生産量、森林の焼失面積などが時々刻々変化する様子を表示するウェブサイトもありますし、今日一日に発行された新聞の部数、今日1日で送られたeメールの数、今日1日に書かれたブログの数、今日1日のグーグルでの検索数など知ることのできる情報は数多くあります。
 かつては政府や企業が努力をして集めていた情報が、個人で自由に入手できる時代です。ぜひ、その能力を活用していただければと思います。





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