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トランプ大統領の行動や発言には日本でも異論がありますし、安倍政権の一連の委員会答弁にも疑問を感じている人は多数存在します。 しかし、記者や評論家でもなければ大半の人々には発言の機会もなく、悶々とした生活をせざるを得ません。 さらに現在では大半の国で表現の自由が保証されていますが、一部の国では政府批判などをすると逮捕される可能性もあります。 そこで古くから一般の人々が権力を批判するのに使ってきたのが歌に託すという方法でした。 その代表は江戸時代に始まり、現在でも人気がある川柳です。 実は明日は260年前の宝暦7(1757)年の旧暦8月25日に柄井川柳(からいせんりゅう)という俳句などの評価を仕事としていた人が、現在の東京都台東区蔵前で初めて「万句合(まんくあわせ)」と言われる興行をした日で、それを記念して「川柳発祥の日」とされています。 実際、その興行を開いたと思われる蔵前に「川柳発祥の地」という石碑が設置されています。 「万句合」は「万句寄(まんくよせ)」とも言われ、柄井川柳のような評者が「前句」を印刷した紙を広く配布し、人々が前句に続く「付句」を書いて応募し、それを採点して評価の高い「勝句(かちく)」をまとめて印刷して、入選者に景品を添えて返したという興行です。 その柄井川柳に因んで「川柳」という文芸が誕生したのですが、同じ五七五の俳句と違うのは、俳句には季語や末尾に「古池や蛙飛び込む水の音」の「や」、「野ざらしの心に風の浸む身かな」の「かな」などの「切れ字」を付けるという規則がありましたが、川柳にはなく、内容も自由ということです。 現在は柄井川柳が紙で募集した時代ではなく、インターネットで応募できる川柳のサイトが幾つもありますので、それらのサイトから政治に庶民が挑戦している川柳を紹介したいと思います。 まずトランプ大統領への挑戦です。 「G7 そのうちなるか G6に」 これは説明するまでもありませんが、G8からロシアが排除されて現在はG7ですが、次はアメリカが排除されてG6になるという予測です。 「アメリカ人 トランプ切りが 下手になり」 早く弾劾や更迭をしてくれという願望でしょう。 安倍総理についても数多くあります。 まずトランプ大統領がらみで 「真っ先に 駆けつけ一家に 値踏みされ」 昨年、トランプ候補の当選が確定した直後の11月7日夕方に、安倍総理がニューヨークのトランプタワーを一番乗りで訪問して1時間半会談した時のことです。 また漢字の読み間違えを皮肉った 「云々を でんでん無視無視 安倍総理」 という川柳もあります。 稲田前防衛大臣も格好の対象です。 「記憶なし 記録出てくりゃ 記憶違い」 「自己防衛 援護射撃も 役立たず」 で遂に最後は 「防衛省 稲田は否だと リークする」 ということです。 これらは募集しているサイトでの採点の高いものから私が選んだのですが、わさびの効いたものはそれほど多くありません。 それは五七五で、17文字しか使えないことが理由かもわかりません。 そこで期待されるのが五七五七七の三一文字の「狂歌」です。 これは古代に遡る由緒ある形式で、内容は社会風刺、皮肉を盛り込み、かつ滑稽が必要とされています。 狂歌には元歌がある場合が多く、例えば、江戸時代の享保の改革の時期の 「旗本は今ぞ寂しさ勝りけり 御金も取らず暮らすと思えば」 これは百人一首にもある 「山里は冬ぞ寂しさ勝りける 人目も草も枯れぬと思えば」 を下敷きにしています。 まずトランプ大統領関係から 「トランプの乱れた治世にあきれ果て オバマの無力政治を懐かしむ」 字余りですが、この下敷きは 「白河の清きに魚(うお)の棲みかねて もとの濁りの田沼恋しき」 これも蛇足ですが説明しますと、田沼意次(おきつぐ)が老中の寛政時代に治世が乱れて失脚し、白河藩の藩主松平定信が老中になって幕府の行政改革した「寛政の改革」が実行されますが、在野の人々の政治批判を禁止するなど、一気に窮屈な社会になりました。 最初は松平定信の改革を評価する 「田や沼や汚れた御世を改めて 清くぞ澄める白河の水」 という狂歌が登場しますが、窮屈すぎるので、先のような歌が登場した訳です。 さらにトランプ大統領と安倍首相の関係を詠んだ 「太平洋の眠りを醒ますトランプに たつた三週間で晋三眠れず」 も作られています。 これは言うまでもなく、嘉永6(1853)年にペリー艦隊が4隻の艦船で江戸湾に到来した事件を詠んだ 「泰平の眠りを醒ます上喜撰 たつた四杯で夜も眠れず」 を元歌にしたものです。 現在の日本は政府を批判しても逮捕される心配はない国ですが、このような川柳や狂歌に根付く批判精神の伝統を忘れずに政治や行政に関心を持つことが必要だと思います。 |
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