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論文

 今日は日本のテレビジョン放送で外国映画の占める比率について考えて見たいと思います。
 2003年にNHKの衛星放送で韓国映画『冬のソナタ』が放送され、大変な人気になり、翌年からは地上波で連日、韓国映画が放送されるようになり、平均視聴率が23%という異常な状態でした。
 その後、このような恋愛物だけではなく、時代物の『ホジュン:宮廷医官への道』『宮廷女官チャングムの誓い』なども大人気でした。
 しかし、2012年に李明博(イミョンパク)大統領が日本政府の抗議にもかかわらず、韓国が不法占拠している竹島に上陸して一気に日本での韓国への国民感情が悪くなり、韓流ドラマの人気も落ちましたが、現在でも、かなり上映されています。

 そこで東京のキー局とBS放送で、韓流ドラマが放送されている時間を調べて見ました。
 地上波では大きく減り、定期的に放送しているのはテレビ東京が平日に1時間放送して合計5時間だけですが、BS放送では、NHKのBSプレミアムが毎週合計2時間、民間放送では平日は毎日放送されており、合計すると全局で1週間に55時間30分にもなっています。
 これがどれほど多いかを、韓国以外の外国の映画番組と比較してみると分かります。
 定期的に外国映画が放送されているのは、地上波ではNHK、日本テレビ、テレビ東京が合計で毎週22時間、BS放送は、NHKと民放5局を合計して毎週31時間になります。
 これらを合計すると、韓国映画は毎週60時間30分なのに、それ以外の外国映画はすべてで53時間ですから、韓国に偏っていることが分かります。
 これ以外にCS放送では韓国映画だけのチャンネルもあります。

 視聴者が見たいという番組を提供すると考えれば、疑問とすることもないかもしれませんが、日本以外では映画に限らず、外国の番組の放送時間を規制している国が多数あります。
 EUは放送時間の50%以上はEU域内で製作された番組を放送することという規制を設けていますが、それ以外に各国独自の規制があります。
 もっとも厳しいのはフランスで、EUの規制以外にフランス語の番組を40%以上とし、19時から22時のプライムタイムではさらに比率を上げています。
 中国は外国のテレビドラマと映画は全体の25%以下、それ以外の外国の番組は15%以下にし、外国のアニメーション番組も規制しています。

 先ほどご紹介した韓国映画の放送時間は全体の3%ですし、外国の映画を合計しても5・6%ですから数字としては問題ないのですが、世界の主要国で日本とアメリカだけが一切、制約がないということも知っておくべきだと思います。
 規制することについては問題があるかもしれませんし、最近ではインターネット経由で外国番組は自由にみることができるので、規制は時代遅れかもしれませんが、自国の文化の維持や外国の文化の干渉という点では考えるべきです。

 過去には露骨に干渉した例があります。
 アメリカは1823年に採択したモンロー主義によってヨーロッパ諸国の紛争に干渉しないことを決めていましたが、1917年になって第一次世界大戦に参戦することを決定しました。
 そこでヨーロッパ諸国にアメリカという国を理解してもらう必要があり、その手段として映画を使うことにします。
 そのためにアメリカからヨーロッパに輸出する映画は、娯楽映画といえども上映時間の20%以上は教育的内容が含まれていること、ドイツ映画を国内で上映している国にはアメリカ映画を提供してはいけないことなどを決めました。
 当時はチャップリンやダグラス・フェアバンクスの映画がヨーロッパで人気があったので、そのような番組を通じでアメリカの宣伝をしたわけです。

 現在の韓国映画は同じような役割を担っていますが、意外に効果があるという話を紹介したいと思います。
 幸福の国といわれるブータンに、日本の雑誌記者が取材に行き、10代前半の女性に現在の幸福度を尋ねたところ、8点という答えでした。
 そこで足らない2点は何かと聞いたところ、韓国に生まれなかったことという答えだったそうです。
 ブータンは1999年にテレビジョン放送の視聴を解禁しましたが、その中で韓国が無償で提供している韓国ドラマが頻繁に放送され、それを見た子供が韓国を素晴らしい国だと思っているということです。

 このように文化が国力になるということを言い出したのは1990年代のアメリカで、カータ大統領の特別補佐官であったブレジンスキーは、アメリカを世界一の国家にしたのは、軍事力、経済力、技術力とともに、「粗野ではあるが、世界の若者を魅了して止まない文化力」であると説明しています。
 ダルビッシュ投手、田中投手などがMLBを目指すのは、この見解を証明していますし、アメリカの情報産業はインドや中国の出身者が支えているといわれるのも同様です。
 それを参考に韓国はテレビジョン番組や映画を輸出するようになったのですが、日本はうまく行っていません。
 世界の流れから大幅に遅れた2010年に、経済産業省が「クールジャパン室」を作り、日本文化の輸出を目指します。
 2012年には第二次安倍内閣で稲田朋美さんが「クールジャパン戦略担当大臣」任命され、さらに翌年には官民ファンドとして「クールジャパン機構」も設立されましたが、目立った効果を挙げていません。
 外国番組の規制はともかく、21世紀は文化力が重要な国力になるという視点から、日本は政策を再考する必要があると思います。





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