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論文

 日本時間の12月2日に、来年6月にロシアで開催される国際サッカー連盟(FIFA)主催のワールドカップの予選の組合せ抽選会が開催されました。
 日本はH組で、ポーランドとコロンビアとセネガルと予選を戦うことになりましたが、それらの国々の実力はポーランドが世界7位、コロンビアが13位、セネガルが23位で、日本は55位ですから強敵ばかりが相手と解説されています。
 この順位はFIFAランキングと言われ、ほぼ毎月更新されており、9月には40位でしたが、現在は55位に下がっています。
 これがどのようにして決まるかを簡単に紹介したいと思います。

 国際試合の過去4年間の成績で決まりますが、この国際試合は「国際Aマッチ」と言われる試合しか対象になりません。
 これはFIFAに加盟している211カ国の、それぞれ年齢制限のない代表チーム「Aナショナルチーム」が戦い、相手もAナショナルチームでないと国際Aマッチにはなりません。
 かつては勝てば3ポイント、引き分ければ1ポイントを獲得し、その合計で順位を決めていましたが、強い相手と戦う場合と弱い相手と戦う場合が同じではおかしいということで、2006年から計算方法が改定されました。
 4つの項目で計算されます。1)従来と同じ勝点、2)親善試合かワールドカップの予選か本大会かなどの試合の重要度の係数、3)200から相手のFIFAランキングの順位を引き算した数値、4)大陸間の強さの係数を掛算し、この数値を累積した結果で順位をつけます。

 この大陸間の強さの係数とは地域間の強さを反映した数字です。
 FIFAは世界を、アジア、ヨーロッパ、南米、北中米カリブ海、アフリカ、オセアニアの6地域に分け、それぞれにサッカー連盟を置いています。
 そして係数は南米サッカー連盟が1.00、ヨーロッパサッカー連盟が0.99でそれ以外は0.85に決められ、対戦する両チームの所属する連盟の係数の平均点になります。
 11月10日に世界ランキング2位のブラジルと対戦したとき、日本は負けたので日本には点数がつきませんが、もし引き分けていれば、勝点は1、親善試合なので試合の重要度は1、対戦相手の強さは200-2で198、大陸間の強さはブラジルの所属する南米サッカー連盟が1・0で日本の所属するアジアサッカー連盟は0・85なので、平均して0・925になり、すべてを掛け算すると
   1X1X198X0・925=183・15
になったところでした。

 なんとなく、ワールドカップに古くから参加している地域が有利になっているし、ヨーロッパは多くの国が密集しているので国際Aマッチが開催しやすいし、ランキング上位の国が多いので点数が高くなるという利点があるということでも有利ですが、実際に各地域の順位の平均を計算してみると仕方がないかという結果です。
 南米の加盟国は10カ国ですが、それらは2位のブラジルから71位のエクアドルで平均順位は26位、ヨーロッパは55カ国で平均が67位、アフリカが54カ国で108位、北中米カリブ海が32カ国で133位、アジアが45カ国で126位、オセアニアが11カ国で最高のニュージーランドでも122位で、平均順位は171位ですから、地域ごとに差をつける係数があるのも仕方がないというわけです。

 この平均順位はワールドカップに出場できる国の数にも反映しています。
 南米は10カ国しか加盟していないのに4・5カ国の枠があり、今回は地域間の決勝でも勝ったので5カ国が出場していますから、確率50%ですが、世界ランク10位のチリでさえ出場できない激戦区です。
 次の激戦区がヨーロッパで55カ国に対して14カ国の枠があり、出場の確率25%ですが、14位のイタリアや20位のオランダでも出場できない大変な競争のある地域です。
 アジアは45カ国で4・5カ国の枠があるので確率10%ですが、最高のイランでも32位ですし、100位以下の国が33カ国と4分の3を占めていますから、これも納得というところです。

 日本はアジアでは3位であるものの、世界では55位という残念な状態ですが、これは国力として妥当な順位かを計算してみました。
 今回のヨーロッパの予選の驚きはアイスランドが予選を突破したことです。
 アイスランドは人口が33万人という小国ですがランキング22位で、17位のクロアチアが同じ組の予選グループで7勝1分2敗となり、1位で出場権を獲得しています。
 人口33万人というと前橋市や所沢市程度ですから、1億2700万人もいる日本はアジア予選などは楽に通過してもおかしくありません。
 アイスランドほどではないにしても、2018年の出場権を獲得したランキング17位のクロアチアは人口417万人、26位のコスタリカは486万人、56位のパナマは人口403万人で、福岡県の510万人以下です。

 経済力を示す1人あたりの国民総生産でも、アフリカから出場する5カ国はFIFAランキング23位のセネガルが943ドルで、27位のチュニジアが3749ドル、エジプトが3685ドル、40位のモロッコが3004ドル、50位のナイジェリアが2207ドルで、いずれも日本の10分の1以下でしかありません。

 サッカーは野球と違って道具が不要で、ボールが1個あればできますから、貧しい国でも参加できるため、多くの地域で多くの人が参加しています。
 サッカーの国際機関FIFAには211カ国が加盟していますが、国際野球連盟は124カ国でしかありませんし、競技人口もサッカーが4億5000万人に対して野球は3500万人と1割にもなりません。
 その結果、多くの若い人々が夢を見て参加して小さな国、貧しい国が強国になっているという背景があります。
 今回は日本より人口の多い中国、インド、アメリカ、インドネシア、パキスタン、バングラディシュは予選を突破せず、1人あたりGDPで日本より上位の国でロシア大会に出場できるのは、スイス、アイスランド、デンマーク、オーストラリア、スウェーデン、ドイツ、ベルギー、イングランドの8カ国のみです。
 このように見てくると、日本が極端に劣っているわけではありませんが、なんとか来年6月に好成績を残し、FIFAランキングが上位になることを期待したいと思います。





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