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論文

 昨年四月から、北海道テレビ放送で第二土曜の昼前に毎月一回放送されている「月尾嘉男・日本百年の転換戦略」という番組を撮影するため、毎月のように道内各地を訪問している。河川や海岸でカヌーをし、雪原でスキーをしながら、日本の将来の針路を提案するという内容のため、行先は都会よりも風光明媚な自然環境に集中している。

 これまでも道東では釧路湿原や知床半島は当然として、野付半島や屈斜路湖など数多くの景勝の場所で撮影をしてきた。このような番組で地域の風景が放送されることは多大の宣伝効果があることは、大河ドラマの舞台になった地域の観光客数が飛躍することで証明されているが、効果はそれだけではない。撮影そのものが経済効果をもたらすのである。

 我々の番組の撮影は安宿に宿泊して食事もコンビニエンスストアのおにぎりが中心であるから、自慢するような経済効果はないが、映画の撮影では人数も多数であるし、俳優などは一流旅館の最高の部屋に宿泊するから地域経済への効果は絶大である。まして外国映画では一分の場面の撮影に億円単位の金額を投入するので、地域の景気さえ左右する。

 地域の宣伝と経済という二重の効果を期待して、最近では映画やテレビジョン番組の撮影を誘致する活動が活発になってきた。これを推進するフィルム・コミッションという組織は全国に七○以上あり、道内では函館、小樽、札幌に設立されているし、東京などは石原知事の音頭で都庁内部に窓口があり、都内での撮影の要望に対応している。

 また、インターネット内部には道内全域の撮影適地を紹介する「北海道ロケーションライブラリー」というウェブサイトがあり、釧路根室地域でも、釧路市湿原展望台、多和平展望台、納沙布岬、霧多布岬など、六○箇所以上が列挙されているが、残念なことに、活動は本来のフィルム・コミッションには程遠い内容でしかない。

 このような分野で最高のサービスを提供しているのはニューヨークであり、役所の窓口にシナリオを持参して相談すると、専門の職員が撮影適地を紹介するだけではなく、撮影許可の取得や訓練されたエキストラの手配までしてくれる。その結果、マンハッタンで撮影される映画やテレビジョン番組は年間に数百にもなり、一大産業になっている。

 最初に説明したように道東は撮影適地の宝庫であるが、現状では地域の理解はない。役所の窓口に相談しても反応はないし、現場では一歩だけ柵外で撮影しても怒鳴られるというような冷遇を経験してきた。ニューヨーク市警のように、パトロールカーによるカーチェイスにまで協力するのは困難にしても、見直しは必要である。

 そのためには民間有志が活動するのがいい。フィルム・コミッションを設立し、映画会社や放送会社に宣伝をして撮影を誘致するのである。撮影適地の紹介程度ではなく、撮影許可の代行、エキストラの協力など、国内最高のサービスを提供できれば、地域の財宝を宣伝、雇用、経済という何重もの目的に利用できるのである。




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