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論文

 今年九月一日からグーグルという企業が日本と韓国とで同時にサービスを開始した「グーグルニュース(http://news.google.co.jp)」が話題になっている。アメリカではすでに二年以前から開始されているが、一言で表現すれば、インターネットで情報を提供する電子新聞の一種である。しかし、既存の電子新聞とは大幅に相違した新規のサービスである。

 検索システムで調査すると、国内には数百、世界では一万以上の電子新聞が存在しているが、それらの大半は母体として既存の新聞を発行している組織があり、そこが収集した情報をインターネットでも提供しているという仕組である。しかし、グーグルニュースの場合は、そのような情報を自身で収集する体制はなく、インターネット内部にある膨大なウェブサイトから自動で情報を収集して編集しているだけである。

 グーグルはスタンフォード大学に在籍していた二人の大学院生が約六年前に創業したベンチャー企業で、世界に約四○億は存在していると推定されるウェブページの内容を自動収集し、利用者側が関心のあるキーワードを入力するだけで、そのキーワードのあるウェブサイトを一瞬にして列挙するサービスを開発し提供している。この検索システムがなければ、インターネットは無用の長物になるとさえいえる便利なサービスである。

 このサービスへの世間の評価は今年八月にグーグルがナスダック市場に上場したときに明確になった。上場直後の株価は一○七・一二ドルとなり、株式時価総額は二七○億ドル以上になった。これは自動車製造業のフォード・モーターズやジェネラル・モーターズ以上であり、インターネット関連企業でも、オークションの「イーベイ」や情報検索サービスの「ヤフー」を追跡する三位に位置している。

 グーグルは約七万台といわれるコンピュータを駆使し、クローリングという手法で世界のウェブサイトを検索し、その情報をクラスタリングという手法で整理しているが、日本のグーグルニュースも、この技術によって国内の約六○○の電子新聞などのウェブサイトから情報を収集し、「経済」「政治」「文化」など八種に分類したニュースの見出と概要を提供している。その見出をクリックすれば、ウェブサイトにある本文を参照できる。

 このような情報提供は「ヤフーニュース」など既存のものもあるが、それらが人手で処理しているのと比較し、完全自動で処理している結果、一分間隔程度でクローリングできるので、グーグルニュースでは最新のニュースを入手できることが可能になる。もちろん知的財産の権利問題はあり、クローリングを拒否している会社もあるが、自社のウェブサイトへのアクセスを増加させる効果があると積極提供している会社もある。

 より重要なことは、グーグルニュースがインターネットでの情報提供のポータルサイトになることである。これまで、我々はまず特定の電子新聞にアクセスして記事を閲覧してきたが、これからはグーグルニュースで世間の概要を認識し、それから各種の媒体にアクセスすることになる。一般のウェブサイトもグーグルの上位に位置することがアクセスを左右するように、既存の情報媒体の価値もグーグルニュースが左右することになる。

 しかし、それでも既存の情報媒体の価値は厳然と存在する。情報は創造され編集され伝達される。新聞も雑誌もこの全体を実行しているが、グーグルニュースは情報を創造していない。この部分にこそ情報の価値があると確認すれば、既存の情報媒体も、そこに努力を集中することにより、グーグルニュースをむしろ宣伝媒体に利用できるのである。




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